この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている




 見えている。
 あれが。


 それは。
 不足しているから。
 心の酸素が。





 今日も。
 ケンカをした、お父さんと。

 とはいっても。
 お父さんに一方的に侮辱の言葉を吐き捨てられているのだけど。


 時間があれば。
 言ってくる、暇つぶしのように。

 うんざりする、本当に。



 だから。
 関わりたくない、お父さんとは。





 険悪な状態、お父さんと。

 そんな状態が。
 続いている、何年も。


 だから。
 なっている、危険な状態に。
 自分の精神が。
 そんな気がする。

 ……大丈夫かな、私。





 そして。
 私は学校の友達ともうまくいっていない。












 ……なんか。
 疲れた。


 そして。
 限界がピークに達し。

 休んでしまった、学校を。







 初めてだった。
 病気でもないのに学校を休むのは。





 身体は元気。
 寝込むこともないから辛くない。

 だから思いきり心のリフレッシュができる。


 そのはずなのに。

 なんだろう。
 この気持ち。

 できない、全然。
 リフレッシュすることが。



 ダメだ。

 落ち着かない、全然。


 このまま自分の部屋にいても。
 してしまう、モヤモヤと。










 だから。
 小さめのバッグに必要なものを入れ。
 そっと家を出た。





 時刻は十時を回ったところ。

 多くの人が会社や学校で仕事や勉強をしている。


 そんな時間に。
 学校外にいる、自分が。

 それは、なんだか不思議な気持ちだった。



 平日。
 いつも当たり前のように過ごしていた時間。

 離れてみる、その当たり前から。


 そのことは。
 ない、違和感が。
 そう言えば噓になる。





 だけど。
 無理して走り続けて。
 心が酸素不足。
 そうなってしまう。

 その前に。
 少しだけ立ち止まって。
 呼吸をする、しっかりと。


 それは。
 必要なこと。
 そう思うから。












 私が向かったところ。
 それは近所よりも少しだけ遠くの場所にある公園。



 そこにしたのは。
 その方が現実から少しでも遠ざかることができる。
 そう思ったから。


 よく知っている場所。
 そういうところよりも。
 あまり知らない場所。

 いいと思った。
 そういう場所の方が。










 公園の中に入り。
 自販機でジュースを買い。
 空いているベンチに座る。







 今は六月の中旬。

 すでに。
 入っている、梅雨に。


 今日は梅雨の時期とは思えないくらいに快晴。





 皮肉にも。
 私の心の中の天気。
 正反対、それとは。


 私の心の中には。
 降り続けている、雨がじとじとと。
 いやらしいくらいに。

 湿度もかなりあり。
 不快度指数がヤバいくらいに高い。



 自然界の梅雨は。
 明ける、時期が来れば。

 だけど。
 私の心の中の梅雨。
 年中明けることはない。




 * * *


 昼になり。
 立て続けに鳴る受信音にハッとした。


 バッグからスマートフォンを取り出し。
 確認する、メッセージを。










 メッセージを送ってきた相手は。
 今、クラスで私が一緒に行動をしている四人の女子生徒たち。

 ……一応、私の友達(?)。



 昼の休憩になり。
 送ってくれたのだろう、メッセージを。

 メンバーは。
 真碧(まみ)さん。
 加織(かおり)さん。
 桃萌(ともえ)さん。
 純菜(じゅんな)さん。


 メッセージの内容は。
 四人とも、ほぼ同じ。

彩珠(あじゅ)さん、大丈夫?
 熱があるの?
 無理しないでね。
 お大事に】

 というような感じ。







 四人からメッセージが送られてきて。
 正直なところ……複雑な気持ちになった。



 仲良くない、本当は。

 それなのに。
 無理してメッセージなんか送ってきて。


 そう思うと。
 ざわざわした、胸の中が。





 今は。
 関わりたくない、あの四人とも。

 それが正直な気持ちだった。





 * * *


 もう夕方かぁ……。





 帰らなければ、そろそろ。

 だけど。
 家に帰ったら。
 またお父さんに侮辱の言葉を浴びせられてしまう。


 わかっている、それが。

 だから。
 帰りたくない。



 このまま。
 このまま、どこか。

 私のことを知らない。
 はるか遠くへ。
 行きたい。





「さて、
 どうしよう、今から」


 悩んだ、ものすごく。

 その結果。
 やめることにした、とりあえず。
 今日は家に帰ることを。










 お母さんには。
 送った、メッセージを。
 心配かけたくないから。

【今日は友達の家に泊まるから】と。







 だけど。
 そうではない、本当は。

 家に泊まる。
 それができる友達。
 いない、私には。


 そこまではいかないとしても。
 笑い合える、心から。
 いない、そういう友達も。





 だけど。
 送った、噓のメッセージを。
 お母さんに。


 それは。

 野宿をするかもしれない、公園で。

 伝える、そんなふうに。

 そうしたら。
 心配する、絶対に。
 お母さんは。
 そう思ったから。



 心配させたくない。
 大好きなお母さんのことを。