それは一瞬のこと。

 気付いたら。
 空澄(あすみ)の腕の中に。


 伝わってくる、やさしく穏やかに。
 空澄の温もりが。





 だけど。
 それと同じくらい。
 空澄に伝わってしまっていると思う。
 私の胸の騒がしさ。


 それは。
 恥ずかしい、ものすごく。

 そのためか。
 熱くなっている、とても。
 全身が。



 抱きしめられる、空澄に。

 それは。
 嬉しい、正直に。


 だけど。

 恥ずかしさ。
 ある、それも。

 そのため。
 わからない、どうすればいいのか。



「それじゃあ、
 また明日な」


 なっている、嬉しいパニックに。


 そんなとき。
 離れた、やさしく。
 空澄は私から。


「また明日」


 まだ残っている。
 空澄の温もりが。

 それから。
 治まらない、ドキドキも。


「じゃあな」


 空澄は。
 やさしく穏やかに微笑みながら。
 ポンポンとした、やさしく。
 私の頭を。


 そうして。
 歩き出した、自分の家へ向かって。



 そんな空澄を。
 見届けた、姿が見えなくなるまで。