この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている




「なんだよ、それ。
 言ってくれるじゃねぇか」


 休憩していた凪紗のニヤニヤ。
 始まった、再び。


「だったらさぁ、
 なおさら私らのことも連れて行かないとな」


 そう言いながら。
 頷いている、凪紗は。
『うんうん』と。


「なぜそうなる」


 凪紗の言葉に。
 空澄(あすみ)は。
 している、不思議そうな表情(かお)を。


「いいだろ。
 連れていく人数が増えたところで
 減るもんじゃないんだからさ」


「なっ、そうだろ」
 そう言いながら。
 している、ポンポンと。
 空澄の肩を。

 そんな凪紗に。
 言っている、空澄は。
「凪紗、お前なぁ」と。





 空澄(あすみ)と凪紗。
 二人のやりとり。

 それを見ながら思い出していた。


 見に行った、夕焼けを。
 空澄と一緒に。
 そのことを。












 きれいだった、ものすごく。

 あまりにも美しくて。
 感動した、とても。


『なんて美しい空なの』
 出てくる、自然に。
 その言葉が。










『この空を彩珠(あじゅ)と一緒に見たかった』







『私と一緒に』

 そう言ってくれた、空澄が。


 そのことが。
 照れくさい、なんだか。

 だけど。
 とても嬉しくて。





『ありがとう。
 すごく嬉しい』


 だから。

 そう言った、空澄に。



 そのことが。
 照れくさい、少しだけ。

 それでも。
 伝えたかった、どうしても。
 空澄に。





「よしっ、わかった。
 日付が変わるから明日になるけど、
 みんなで朝焼けを見に行こう」


 見に行った、夕焼けを。
 空澄(あすみ)と一緒に。

 思い出している、そのことを。


 その間に。
 進んでいる、話が。


彩珠(あじゅ)
 それでいいか」


 空澄の言葉に。
「うん」
 そう返事をした。



 空澄の言葉を聞いて。
 凪紗も心詞(みこと)も響基も。
 喜んでいる、ものすごく。


 見ている、みんなが喜んでいる顔を。

 そうすると。
 私も嬉しい気持ちになる。





 こうして。
 見に行く、みんなで。
 朝焼けを。
 なった、そうすることに。





 私、空澄(あすみ)、凪紗、心詞(みこと)、響基は。
 出た、いつもよりも早く。
『心が呼吸できる世界』を。







 外は。
 暗い、まだ。

 なので。
 空も真っ暗。



 その中で頼りになるのは。
 一定の間隔で並んでいる街灯の灯り。


 ただ。
 その灯りも。
 歩いて行くにつれて。
 広がってきている、間隔が。

 なので。
 外に出たばかり。
 そのときよりも。
 暗くなってきている。





 だけど。

 街灯の灯り。
 それに頼らなくても。

 もうすぐ。
 包み込んでくれる、やさしく。
 自然の光が。


 あと少しで。
 明ける、夜が。





 歩いている、しばらく。

 そうして。
 着いた、私と空澄(あすみ)が夕焼けを見に来た場所に。







 ここには。
 ない、街灯は。


 だけど。
 変化している。
 空が真っ暗から薄暗く。

 だから。
 見やすくなってきた、ほんの少しだけ。
 外の景色が。



 この場所は。
 見渡すことができる、広い範囲を。

 なので。
 できる、十分に見ることが。
 朝焼けを。





 この景色に感動している凪紗と心詞(みこと)と響基は。
「あっちもいいよ、行ってみよう」
 そう言っている。

 そうして。
 私と空澄がいるところ。
 そこから少し離れた場所。
 行った、そこに。



「もうすぐ夜が明ける」


 凪紗たちは。
 離れている、少し。

 なので。
 二人きり、私と空澄は。


 そんなとき。
 聞こえた、空澄の穏やかな声。





 空澄の声は。
 魔法のよう。


 その声に。
 癒され。

 心が。
 穏やかになり。

 もらえる、元気を。



 包まれている、そんなエネルギーに。

 そのとき。


「きれい……」


 明けた、夜が。


 その景色は。
 美し過ぎて。

 出た、やっぱり。
 自然に言葉が。



 夕焼けも。
 素敵だった、ものすごく。


 そして。
 今見ている朝焼けも。
 溢れている、魅力に。


彩珠(あじゅ)


 見とれている、朝焼けに。

 そのとき。
 聞こえた、空澄のやさしい声が。


 その声にひかれるように。
 見た、空澄の方を。





 いつも魅力的な空澄(あすみ)

 そんな空澄が。
 より一層、魅力的に。





 やさしい朝焼けの光。

 包み込んでいる、やさしく。
 空澄のことを。


 そうすることで。
 より輝いている、空澄が。



 そんな空澄は。
 眩し過ぎて。

 できない、直視することが。


 そのはずなのに。
 目を離す、空澄から。
 できない、そうすることが。


「本当だから」


 目を離す、空澄から。

 そうすることができず。
 見つめている、じっと。


 そんなとき。
 話し始めた、空澄が。



 だけど。

 本当って。
 何がだろう。


「凪紗たちに言った、あの言葉」


 あの言葉?


「『特別』って言ったこと」


 え。


「好きだから」


 それは。
 あまりにも突然で。


「俺は彩珠(あじゅ)のことが好きだ」


 一瞬、わからなかった。
 空澄が何を言っているのか。



 だけど。
 理解した、すぐに。


 そのとたん。
 ものすごい勢いで。
 暴れ出した、心臓が。

 そして。
 熱くなってきた、顔も。


「彩珠の気持ちは、
 いろいろ落ち着いてから教えてくれればいいから」


 気遣ってくれている。
 空澄が私のことを。



 だけど。

 必要ないよ。
 その気遣いは。


 だって。





「……好き」


 気付いたから。


「私も空澄(あすみ)のことが好き」


 自分の気持ちに。


「……私も、って……」


 私が。
 伝えた、想いを。

 そのことに。
 空澄は驚いているようで。


「俺が彩珠(あじゅ)に言った好きという意味、
 ちゃんとわかってるのか」


 そんな空澄の言葉に。


「わかってる」


 空澄が私に伝えてくれた。
『好き』
 その意味。
 わかっているよ、ちゃんと。


 そういう気持ちを込めて。
 重ね合わせた。

 空澄の手の指の間に。
 自分の手の指を。



 空澄の手指。
 感じる、触れると。

 やっぱり男子だな。
 私よりも大きくて。
 しっかりしている、骨格も。







 私の行動に。
 空澄は。
 驚いている、さらに。
 見える、そのように。





 ただ。
 驚いていた、さっき。
 そのときの空澄と違うことが。



 それは。

 空澄は私のことを見つめ。


 私の顔に。
 空澄が自分の顔を近づけ……。





彩珠(あじゅ)空澄(あすみ)
 こっちに来た方が、もっとよく朝焼けが見えるぞ」


 空澄と私。
 二人の顔の距離。
 ほんのわずか。

 そんなとき。
 聞こえた、凪紗の声が。


「今、いいところなのに」


 中断した、雰囲気。

 それだからか。
 ぼやいている空澄。


 可愛い、そんな空澄が。

 そう思い。
 笑う、クスッと。


「なに笑ってるんだよ」


 ぼやきの次は。
 ふてくされている、少しだけ。


 そんな空澄も。
 思えた、可愛く。



 ふてくされながらも。
 空澄は。
 笑う、仕方なさそうに。

 そうして。
「今、そっちに行く」
 そう言い。
 行った、私と一緒に。
 凪紗や心詞(みこと)や響基のところに。





 朝焼けを見た私たち五人は。
「じゃあ、また夜に」
 そう言い合い。
 帰って行く、それぞれの家に。



 そのとき。
 私と空澄(あすみ)は。
 残る、少しの時間。
 みんなと解散した公園に。


 そうして。
 座っている、ベンチに。

 空澄と手をつないで。



彩珠(あじゅ)
 ちょっとジュース買ってくる」


 空澄は。
 手を離す、やさしく。

 そうして。
 立ち上がる、ベンチから。


「私も一緒に行く」
 そう言ったけれど。
「そこで待ってて。
 オレンジジュースでよかったか」
 空澄はそう言って。
 向かった、自動販売機へ。