夏休み、最終日。市内は花火祭りの花火が咲いては散ってを繰り返し始めた。
 ああ、終わる。夏休みが終わってしまう。どこにいても無意味だ。僕に、居場所などない。僕に、価値などない。また、地獄の日々に時間を削られ、僕の心も削られ……。
 削られ?そうか、削られたんだ。今までのこの生活のせいで。このいつまでも消えない傷を抱えながら。
 もう、どうだっていいじゃないか。いらない。こんな命、もういらない。
 誰かに必要とされたかった。認めてほしかった。僕は、ここにいていいんだと誰かに言ってほしかった。
 甘えてた。そんなの限られた人間だけだ。
 自宅マンションの五階のベランダの柵に座る。ここからでも花火はきれいに見えるんだ。初めて知った。弟も母親も今、この家にはいない。この家にいるのは僕一人。鍵も閉まってるだろう。そう簡単に僕の邪魔をする人もいない。
 ああ、きれいだ。花火がこんなにも散っている。僕も、今から散っていくんだ。
 花火が満開のころ、僕は後ろに体重を預けた。ふわっと臓器が浮く。体が下へと進む。
 これで終わりだ。僕の人生は終わりだ。やっと終われるんだ。
 なのに、よく聞く走馬灯は見えないんだな。やっぱ、迷信なんだと思う。
 笑みがこぼれた。邪険に思う人たちはこの様を見て喜んでくれるだろう。
 全身に鈍い痛みが走り、僕の視界は消えた。黒でも白でもなく消えた。

 この日、花火が咲くころ、僕は自殺した。