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――翌日。僕はちゅう秋に連れられ、神社の鳥居を潜っていた。久しぶりに足を踏み入れる神社は、あの時と全く変わっていない。ふと、少し先に見覚えのある人間を確認し、僕は目を細めた。明るい髪に、整った顔……。
(あの顔、どっかで……)
「君はここで待っていてくれ」
「あ、ああ」
ちゅう秋の言葉に頷き、僕は足を止める。近くの木に寄りかかり、僕はちゅう秋が話しかけた人物を再び見つめた。——あ。
「プレイボーイ……!」
僕をボコボコにし、病院送りにした人間。まさか彼と出会う事になるとは。驚く僕を余所に、ちゅう秋とプレイボーイは何かを話し合うとプレイボーイは深々と頭を下げて鳥居を潜って去って行ってしまった。僅かに見えた表情は、何かを恐れているような、怖がっているような、そんな顔をしていたような気がするが……どうだっただろうか。よく見えなかった。
「それじゃあ、行こうか」
戻って来たちゅう秋に引っ張られるように、僕は神社の奥へと足を踏み進めていく。
ちゅう秋に連れて来られたのは、神社の一角にある納屋だった。薄暗いそこは、ちゃんと掃除がされているようで埃が舞っている様子はない。鍵はかかっていなかったのか、ちゅう秋が扉を引くと何の抵抗もなく扉が開いた。
「凄いな……」
「触らないでくれよ。みんな、大切な神具なんだから」
「わ、わかった」
ちゅう秋の真剣な声に、僕は躊躇いがちに頷く。中に入っていく彼を追いかける気にはなれず、僕は見える範囲で中を見渡した。神具、と彼は言っていたが、僕には農業の鍬や鋤にしか見えない。他にも、用途のよくわからない物や、箒、ドライバーのようなものが転がっている。
(整理整頓してなかったのか……?)
もしかしたら、此処の管理はかなりずぼらなのかもしれない。そんな思いを抱いていれば、ちゅう秋は両手に何かを抱え戻って来た。扉を閉め、先導するちゅう秋に僕は首を傾げる。
「なあ、ちゅう秋」
「何だい、急に」
「君は、何者なんだ?」
風が吹く。ちゅう秋の足が止まった。僕は張り詰める空気に……しかしどこか穏やかな気持ちでちゅう秋を見ていた。彼はたっぷり数十秒沈黙すると、振り返った。
「今日は強行軍だ」
「は?」
――突然、何を言い出すのかと思えば。
僕は思い切り首を傾げる。しかし、それに気づいていないのか、気にしていないのか。ちゅう秋は両手に持った荷物を抱え直すと再び歩き始めた。ゆらゆらと彼の腕の中で揺れるのは――何の変哲もない、スポットライトだった。
――翌日。僕はちゅう秋に連れられ、神社の鳥居を潜っていた。久しぶりに足を踏み入れる神社は、あの時と全く変わっていない。ふと、少し先に見覚えのある人間を確認し、僕は目を細めた。明るい髪に、整った顔……。
(あの顔、どっかで……)
「君はここで待っていてくれ」
「あ、ああ」
ちゅう秋の言葉に頷き、僕は足を止める。近くの木に寄りかかり、僕はちゅう秋が話しかけた人物を再び見つめた。——あ。
「プレイボーイ……!」
僕をボコボコにし、病院送りにした人間。まさか彼と出会う事になるとは。驚く僕を余所に、ちゅう秋とプレイボーイは何かを話し合うとプレイボーイは深々と頭を下げて鳥居を潜って去って行ってしまった。僅かに見えた表情は、何かを恐れているような、怖がっているような、そんな顔をしていたような気がするが……どうだっただろうか。よく見えなかった。
「それじゃあ、行こうか」
戻って来たちゅう秋に引っ張られるように、僕は神社の奥へと足を踏み進めていく。
ちゅう秋に連れて来られたのは、神社の一角にある納屋だった。薄暗いそこは、ちゃんと掃除がされているようで埃が舞っている様子はない。鍵はかかっていなかったのか、ちゅう秋が扉を引くと何の抵抗もなく扉が開いた。
「凄いな……」
「触らないでくれよ。みんな、大切な神具なんだから」
「わ、わかった」
ちゅう秋の真剣な声に、僕は躊躇いがちに頷く。中に入っていく彼を追いかける気にはなれず、僕は見える範囲で中を見渡した。神具、と彼は言っていたが、僕には農業の鍬や鋤にしか見えない。他にも、用途のよくわからない物や、箒、ドライバーのようなものが転がっている。
(整理整頓してなかったのか……?)
もしかしたら、此処の管理はかなりずぼらなのかもしれない。そんな思いを抱いていれば、ちゅう秋は両手に何かを抱え戻って来た。扉を閉め、先導するちゅう秋に僕は首を傾げる。
「なあ、ちゅう秋」
「何だい、急に」
「君は、何者なんだ?」
風が吹く。ちゅう秋の足が止まった。僕は張り詰める空気に……しかしどこか穏やかな気持ちでちゅう秋を見ていた。彼はたっぷり数十秒沈黙すると、振り返った。
「今日は強行軍だ」
「は?」
――突然、何を言い出すのかと思えば。
僕は思い切り首を傾げる。しかし、それに気づいていないのか、気にしていないのか。ちゅう秋は両手に持った荷物を抱え直すと再び歩き始めた。ゆらゆらと彼の腕の中で揺れるのは――何の変哲もない、スポットライトだった。