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そう言って、僕は自分の目の下に人差し指を当てた。指先はもちろん、『目』を指している。彼女が僕の仕草に気がつくのを確認して、指先を今度は口元に触れさせる。その行為が示すものに、たっぷり十秒を開けて彼女は気が付いた。
「も、もしかして……!」
「思っている通りで間違いないよ」
「っ……!」
口元に手を当て顔を真っ青にする天使に、やはりまだ刺激が強かったかと苦笑いを零す。
(そう……顔の『部品』を全て、だ)
「その後は特に順番は決まっていないようだが、羽と足を……」
「す、すみません!」
バンッとテーブルが叩かれ、大きな声が鼓膜を揺らす。驚いて言葉を止めれば、天使は立ち上がっていた。荒い息を吐く彼女は、どうやらかなり気が動転しているらしい。震える肩を見て、僕は首を傾げた。
「どうかしたかい?」
「あ……いえ……その……」
視線を逸らし、口ごもる。様子のおかしい彼女に、心配そうな視線を向けてしまう。
(何か聞きたいことでもあったのだろうか?)
それとも、何か思い当たる事でもあったのか。思考を巡らせていれば、天使は迷ったように視線を彷徨わせるとゆっくりと腰を落ちつけた。強張る肩が、加護欲をそそるのは気のせいじゃないだろう。
「す、すみません、急に大声なんて出してしまって……でも、それ以上は、もう……」
無理です、と小さく聞こえた声に、僕はハッとした。
「あ、あああ! すまない! こちらこそ配慮が足らなかったようだ!」
真っ青な顔で泣きそうに告げる天使に、僕は自責の念で押し潰されそうになる。
(無理だったら言ってくれって僕が言ったんじゃないか……!)
自分の至らなさに、思わず頭を抱えたくなってしまう。しかし、それをする前に目の前の少女が首を横に振る。
「い、いえ。むしろ私の方こそ、教えて欲しいと言ったのにこんなこと……すみません」
そう告げると、彼女は申し訳なさそうに頭を下げる。別に構わない、寧ろ言ってくれて助かったと思っているのだが、彼女にそれは伝わらなさそうである。
(そうだ。もっとクリアな話をしよう)
僕はそう決めると、メモ帳のページを捲った。
「犯人の手口や特徴についてはこれくらいにして、そうだな……一度、事件の全容をまとめてみようか」
「は、はいっ、よろしくお願いします」
ホッとしたように息を吐く彼女に、僕は内心頷く。……良かった。まだ話を聞く気力は残っているらしい。