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「そ、うかい。不快にさせていないのなら、よかったよ」
「はい。ありがとうございます」
「えっと、それじゃあ本題に入ろうか。──君は事件の、何が聞きたいんだい?」
持ちかけた珈琲ゼリーのスプーンを置いて、僕は問いかける。彼女は考えるように宙へと視線を投げると、ゆっくりと桜色の唇を開いた。
「……どうして、あの子達が狙われているのか……とかでしょうか?」
「うーん。残念ながら、そこはまだ分かっていないんだ」
「そうなんですか?」
「ああ。犯人が何のために殺しているのかも、何故ターゲットが土鳩なのかも、実はわかっていない」
正しくは、土鳩が嫌いなのではないか。土鳩に何か嫌なことをされたのではないか。……なんて憶測が飛び交っているのだが、それを彼女に伝える必要はないだろう。僕は手帳を広げペンを取ると、土鳩の事件をまとめるように文字を書き連ねた。
「今わかっているのは、犯人の手口と犯行の特徴だね」
「手口と、特徴……」
「そう。犯人の手口はこうだ」
──まず土鳩を誘き寄せる為、彼らの好む木の実を集める。そしてそれを人通りのない場所、もしくは人が気づかないような場所に撒く。
「土鳩はもちろん餌を求めて集まる。それを何度か繰り返すんだ」
「繰り返す?」
「そう。土鳩達に『ここにはこの時間帯に餌がある』と認識させるんだ」
「なるほど……! それでおびき寄せて、捕まえるんですね!」
「その通り」
僕は頷く。ちなみにこの情報は、警察の話をたまたま聞いたらしいちゅう秋から貰ったものだ。なんでも、夥しい血の中に潰れた木の実がいくつも紛れていたのだとか。もちろん、警察もこの情報は公にしているものの、残念ながらあまり重要視されていない。ニュースでもあまり取り上げられていないのは、そう言う事だろう。
「そして捕まえた土鳩を犯罪の場所へと持っていき……ここから先はかなりグロテスクな話になるが、大丈夫かい?」
「は、はいっ! 覚悟は出来てます……!」
「そうかい? それじゃあ話すけど、気持ち悪くなったらちゃんと言うんだよ」
「わかりました」
しかと頷く彼女に、僕は手帳をめくる。
「……土鳩を捕まえた犯人はまず、彼らの『部品』を全て取るんだ」
「ぶ、『部品』……?」
「顔のパーツのことさ」