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……まさか距離を置こうと決意した矢先に出会ってしまうなんて。僕は僅かに身を引きながら、彼女——天使と対峙する。あまりの緊張に、手が震える。しかし、彼女はそれに気づいていないのかいつも通りに笑って話しかけてきた。
「珍しいですね。こんなところで」
「そ、そう、だね」
ブワッと汗が噴き出るのを隠すように、視線を逸らす。……どうやら僕は今まで接してきたのか、わからなくなってしまったらしい。ぐしゃりと握りつぶしたのは、何だったのか。
「えっと……君は、どうしてここに?」
「今日は学校が早帰りだったので、スーパーに行ってきたんです」
ほら、と見せられるそれを覗き込み、僕は納得する。それならば、ここに居るのも理解できる。袋の中には野菜やお肉から始まり、調味料も何種類か入っていた。
(……この子、料理するんだろうか?)
高校生だし、出来なくても不思議じゃないとは思うものの、やはり料理が出来るというのは美徳の一つだろう。見た目も性格も完璧な天使なのだから、出来て当然のような気もするが、逆に出来なくてもそれはそれで——。
「って! 僕は何を考えているんだ!」
「きゃっ⁉ ど、どうしたんですか、急にっ」
「あ、ああ。すまない。何でもないよ、うん」
驚きに目を見開く天使に、慌てて笑って誤魔化す。……変な人だと思われてしまっただろうか。いやでも、思ったことを彼女に打ち明けてしまえば、“変態”のレッテルを貼られてしまうのは目に見えている。それだけは回避したい。僕は慌ててこの場を後にしようとし――俯く天使に、足を止めた。伏せられた、どこか憂うような瞳。僅かに迷いが見えるのは、僕の気のせいだろうか。
「……あ、あの!」
「な、何だい?」
バッと顔を上げてきた彼女に僕は驚きに目を見開く。——急にどうしたのか。
「確かあなたは記者さん、なんですよね?」
「あ、嗚呼。とはいっても、副業で記者のような真似をしているだけだけどね」
「でも、この前神主様に土鳩についてインタビューをしていたって……」
「まあ、それは取材の一環というか……」
モジモジと指先を交差させる彼女に、僕は再び首を傾げる。傍から見れば初々しい高校生の女の子が何かを言いたげにしているだけなのだが、相手が自分であるが故に何とも言えない、複雑な心境になる。
(取材の内容が気になるんだろうか……?)
だが、それならばこんなに恥じらう必要はないはずだ。