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「なるほど。それで私に、再び土鳩の事件について聞きたいと?」
「ああ」
「よほどネタがないんだな」
「わかっているなら協力してくれよ」
呆れたように笑みを浮かべる彼に、僕はつい頭を抱えてしまう。昨晩、電話越しにアポを取った僕は、いつも通りにちゅう秋の家に来ていた。顔を合わせて早々放たれる言葉に、僕は何も言い返せない。彼は部屋着のまま僕の向かいに座ると、大きく欠伸をする。……インタビューするのは初めてではないけれど、一応仕事であるからと身だしなみを整えてきた僕が馬鹿みたいだ。
「で。今回はどんな議題なんだい? 前は確か、『土鳩が狙われる理由について』だったような気がするけれど?」
「あ、ああ。そういえばそうだったね」
「あの時の記事はかなり人気だったよ。流石、人気デザイナー様だな」と続ければ、ちゅう秋は面白いと言わんばかりに笑みを浮かべる。
「それはよかった。だが、君の書き方あってこそだと私は思っているよ」
「ははっ、そうだろうか」
「そうだとも」
大きく頷く彼に、僕は「ありがとう」と返す。どこかからかいにも聞こえる声をしていたが、気のせいだろう。そう思っていた方が、いい気がする。それよりも重要なのは、取材の内容だ。僕は愛用のノートと、昨晩作ったばかりの計画書を取り出し、彼を見据える。——ここから先は、仕事の時間だ。
「今回は少し踏み込んで、犯人像に焦点を当ててみようと思ってね」
「犯人像?」
「ああ。面白いだろう?」
「ふむ……確かに、斬新な発想ではあると思うが」
どこか気が進まないと言わんばかりに眉を顰める彼に、僕は首を傾げる。彼がそんな反応をするなんて、珍しい。
「何か気になる事でも?」
「……いや、何でもない。それより、その議題はいいと思うよ。私が思うに犯人は――」
ふるりと首を振って否定した彼は、徐ろに犯人像について話始めた。彼の言葉に、僕は慌ててメモ帳にペンを走らせる。——それから、どれくらいの時間が経っただろう。粗方聞き終えた僕は、ふぅと息を吐きちゅう秋を見つめた。彼に向かい合い、笑みを浮かべる。
「どうだい? ネタにはなりそうかい?」
「ああ、十分だよ! これなら締め切りにも間に合う。ありがとう!」
「ははっ、それはよかったよ」
軽快に笑う彼に、僕は再び礼を告げる。報酬は後ほど払うと約束をし、僕は次の取材をすべく神社へと向かった。