リーダーの名前はオルカ・シェーンチ。

彼の母親はシャチの世界では頂点に立つほどの実力者だった。
しかし、なぜオスであるオルカが群れの…いや、一族の長になれたのか、それは100年以上前になる。

「オルカ!ラキエル!」
「母上!兄上、母上が帰ってきた!」

弟ラキエルは国の入口で、母親のシルキーの姿を見つけ、嬉しそうに兄オルカに報告した。
 
「本当か!?」
「しかも、大きな鯨肉担いでる!」
「マジか!じゃあ行こう!」
「ちょ、まってよ兄上!」

オルカとラキエルは、待ちに待った母親の元へ急いで向かった。

「母上!」
「オルカ!」

 オルカとラキエルは嬉しさから母親に抱きついた。
 幼い2人にとっては、唯一の母親の帰還は嬉しい事であり、母親も愛しい息子に会える事は何よりの幸せ。

「母上、よくご無事で!」
「母上、今回は盗賊?罪人?何を倒したんだ?」
「はいはい、ちゃんと屋敷に着いたら話すから、ほら貴方達も荷物運ぶの手伝って」
「はい!」

オルカの故郷はオーシャンでは珍しく、一族同士で出来た小さな国だった。

「今日は皆で鯨の肉で宴だ!」
「兄上!狩ったのは母上達だから、母上の許しがなければ宴は…」
「いいわ、今日は久しぶりに戻ったもの。皆で宴をしましょう」
「やったあ!鯨の肉!鯨の肉!余った肉は皆に分けよ!!」
 
小さな国だからこそ、人々は位など関係なく助け合いながら暮らしていた。
シルキーを含め、戦士になった一族は定期的に隣国や隣村に出向き、村や国に害する者や害獣などを狩って、その賞金で国を支えていた。
そしてシャチ族は、戦いに特化した一族であり、10歳になると戦士になるまで国一丸となって育てられる。
オルカもラキエルも国の大人達によって鍛え上げられてきた。

しかし、そんな国の体制が気に食わない一族がいた。
シルキーからしたら、従兄弟になるトレイが率いるオフショア一族。
トレイは、昔ながらの弱肉強食…強気者が頂点に立ち、弱き者は見捨てるという考えがあり、族長会議には必ずしもシルキーとぶつかっては敗れていた。
しかし、従兄弟の傲慢さは止まらず、仕舞いにはシルキーに奇襲を仕掛け、同族の争いに発展させた。

「皆、私が時間を稼ぐ。オルカとラキエル…生きている仲間を連れて安息地まで逃げろ!あそこまでさえ逃げたら、奴らは追って来れない!」
「分かりましたシルキー様」

シルキーの部下は幼いオルカとラキエルを素早く抱えた。
  
「母上!!母上!!離せ!!離せよ!」
「母上!」
「ダメです、オルカ様!ラキエル様!」
「ダメなんかじゃない!母上が、アイツらに殺される!俺たちが行かなきゃ…」
「オルカ!!」
「!?」
「貴方達は私達の未来、絶対に死んではいけない!貴方達さえ生きれば一族は助かり、国はまた再建できる。貴方達2人は…生まれながら、お父さん譲りの心優しい子…だから絶対に弱き者に歯を向けてはいけない!…オルカ、本当の強き者は弱き者を守り導く者こそ、真の強き者!貴方達は絶対に強さを間違ってはいけない!!さぁ!行って!早く!」
「母上!!」

オルカとラキエルは仲間に連れられ、燃え落ち消えていく国を後にした。
 
「オルカ、ラキエル…一緒に居れなくてごめんなさい。私は貴方達をこの世界の誰よりも愛している」
 
そして、幼きオルカは弟と仲間の支えがあり、一族のリーダーになった。
そんなオルカは、神の試練を合格し、一族のリーダー兼7天の忍辱の戦士としてオーシャンバトルに参加するのであった。