「さて、これからのクエストに向けて、俺のスキルで何ができるか、試してみないとな」
冒険者登録を済ませた夜、俺は民宿で一人呟いた。
現時点で分かっている俺のテイマースキルの効果を整理すると、
『数やレベルに関係なく、手をかざすだけでほぼ無条件に魔物をテイムできる』
『テイムした魔物の経験値がそのまま自分に入る』
『テイムした魔物と思考や五感を共有できる』
「フツーに考えて、これだけでもかなり便利なスキルだよな……」
まだ他の冒険者を知らないから何とも言えないけど、イブはC級冒険者で街じゃ強い方と言っていた。
たった一日でそのイブのレベルを超えてしまっているのだ。
テイムできるレベルや数に上限はないのだろうか?
「もし、上限がないとしたら……」
ーー全ての魔物をテイムできるとしたら、もはやそれは魔王じゃないか。
そこまで考えたところで、俺は自嘲気味に笑う。
まあ、流石にそんな都合の良いスキルは異世界といえどないだろう。
RPGゲームでも、いつか上限が来るものだ。
とにかく、今回確認しておきたいことはこれだ。
『テイムした魔物の能力を使える』
「異空間共有は、スライムがもともと持ってる能力なんだよな?」
「うん、にんげんでいうところの『まほう』ってやつかなー」
「ほう、人間が使う転送魔法とか、収納魔法に相当する魔物の能力ってことか。スライムなら誰でも使えるのか?」
「うん、ほんとうはね。でも、ほとんどのスライムは、『いくうかんきょーゆー』が使えるほどレベルが上がらないから、使えないよー」
俺はそのセリフに、驚いて目を見張る。
「魔物にもレベルがあって、人間みたいにレベルアップに応じて使える魔法が解放されていくってことか!」
「そうー」
そこで俺の頭にふと疑問が浮かぶ。
「でも、なんでお前らはレベルが上がったんだ?」
「トキヤにテイムされたからー。僕らもレベルアップしたんだ」
ぷよぷよと嬉しそうに跳ねるスライチ。
俺は指を顎に当てて考えた。
「経験値の共有は俺だけじゃなくて、他のテイムした魔物たちにも適用されるのか?」
「うん、だから仲間が増えるほど、ぼくたちもレベルアップして、使えるのうりょくが増えてくよー」
前世でやり込んだゲームでも、仲間に持たせておくだけで経験値が自動的に共有されるアイテムがあったけど、それが全ての魔物に自動的に適用されるのか?
ということは、冒険を続けていくうちに、テイムした魔物たちも、どんどん強くなっていくってことか。
「……とりあえず、深く考えるのはやめにしよう」
なんだか壮大な話になってきそうな気がしたので、深呼吸で頭を落ち着かせる。
「そしたらスライチ、ちょっと協力してくれ」
「どうするのー」
「うん、まずはスライムの異空間共有だな。スライチ、口を開けてくれ」
スライチがぷよぷよと揺れながら大きく口を開けて、俺が通れるくらいのサイズになる。
「よっと」
真っ暗な空間に足を踏み入れるのは少し勇気が必要だったが、スライムたちと思考を共有しているためか、不思議と不安はなかった。
「おぉ、ここは魔物の森か」
異空間を通り抜けると、すぐに森に出た。
ここは俺が初めて異世界に来た森で間違いなさそうだ。
「おかえりー」
振り返ると、別のスライムが大きな口を開けてぷよぷよしていた。
こいつが異空間を繋げてくれたようだ。
「おう、と言ってもまだ一日も経ってないけどな」
周りを見るとテイムしたスライムやゴブリン、コボルトたちが集まっている。
「ゴブリンやコボルトは魔法は使えるのか?」
「ぼくらのステータスもトキヤは見られるよー」
「そうなのか?」
スライムに促され、ステータスをオンにする。
すると、ステータスの隅の方に『テイム』という欄があることに気がついた。
それを開くと、テイムした魔物、そして魔物たちのステータスや能力の一覧が表れた。
「おお、これでお前らのステータスも把握できるんだな」
とても便利なシステムだ。
俺のようなテイマーにはおあつらえむきだな。
「どれどれ……」
ステータスをスライドして目を通していく。
事前にスライチから聞いた通り、魔物も個体ごとにレベルやステータスが存在しているようだ。
特に目が引かれたのが、
「お、魔法の欄がある。これが魔物の能力か」
俺のステータスには『魔法:テイム』しか書かれていないが、魔物たちは種族によっていくつか魔法が使えるようだ。
「よく考えたら、俺はレベルが上がってもまだテイムの魔法しか習得してないってことだよな……テイマーは冒険者適性がないってのも、案外的を得てるかもしれない」
しかし俺には魔物たちがいる。
「コボルトは……風魔法が使えるのか。えーと、〈ウィンドブレイク〉!」
俺が手をかざして叫ぶと、刃の形をした白い風が吹き荒び、勢いよく目の前の木々を薙ぎ倒した。
「おぉ! 結構威力があるな」
これは広範囲の攻撃に使えそうだ。
「ゴブリンは、身体強化か。〈フィジカルアップ〉!」
身体強化の魔法を唱えると、全身に力がみなぎる。
試しに、薙ぎ倒された大木を掴むと、軽々と持ち上げることができた。
「すげぇ、超人並みのパワーだ」
これもまた使い勝手が良さそうな魔法だ。
そこらの野盗に襲われたくらいなら、この魔法で一網打尽にできそうな気がする。
「お、炎魔法もあるじゃないか。それに移動魔法! 足が早くなるのかな」
こんな調子で魔法を試しながら、夜は更けていった。
冒険者登録を済ませた夜、俺は民宿で一人呟いた。
現時点で分かっている俺のテイマースキルの効果を整理すると、
『数やレベルに関係なく、手をかざすだけでほぼ無条件に魔物をテイムできる』
『テイムした魔物の経験値がそのまま自分に入る』
『テイムした魔物と思考や五感を共有できる』
「フツーに考えて、これだけでもかなり便利なスキルだよな……」
まだ他の冒険者を知らないから何とも言えないけど、イブはC級冒険者で街じゃ強い方と言っていた。
たった一日でそのイブのレベルを超えてしまっているのだ。
テイムできるレベルや数に上限はないのだろうか?
「もし、上限がないとしたら……」
ーー全ての魔物をテイムできるとしたら、もはやそれは魔王じゃないか。
そこまで考えたところで、俺は自嘲気味に笑う。
まあ、流石にそんな都合の良いスキルは異世界といえどないだろう。
RPGゲームでも、いつか上限が来るものだ。
とにかく、今回確認しておきたいことはこれだ。
『テイムした魔物の能力を使える』
「異空間共有は、スライムがもともと持ってる能力なんだよな?」
「うん、にんげんでいうところの『まほう』ってやつかなー」
「ほう、人間が使う転送魔法とか、収納魔法に相当する魔物の能力ってことか。スライムなら誰でも使えるのか?」
「うん、ほんとうはね。でも、ほとんどのスライムは、『いくうかんきょーゆー』が使えるほどレベルが上がらないから、使えないよー」
俺はそのセリフに、驚いて目を見張る。
「魔物にもレベルがあって、人間みたいにレベルアップに応じて使える魔法が解放されていくってことか!」
「そうー」
そこで俺の頭にふと疑問が浮かぶ。
「でも、なんでお前らはレベルが上がったんだ?」
「トキヤにテイムされたからー。僕らもレベルアップしたんだ」
ぷよぷよと嬉しそうに跳ねるスライチ。
俺は指を顎に当てて考えた。
「経験値の共有は俺だけじゃなくて、他のテイムした魔物たちにも適用されるのか?」
「うん、だから仲間が増えるほど、ぼくたちもレベルアップして、使えるのうりょくが増えてくよー」
前世でやり込んだゲームでも、仲間に持たせておくだけで経験値が自動的に共有されるアイテムがあったけど、それが全ての魔物に自動的に適用されるのか?
ということは、冒険を続けていくうちに、テイムした魔物たちも、どんどん強くなっていくってことか。
「……とりあえず、深く考えるのはやめにしよう」
なんだか壮大な話になってきそうな気がしたので、深呼吸で頭を落ち着かせる。
「そしたらスライチ、ちょっと協力してくれ」
「どうするのー」
「うん、まずはスライムの異空間共有だな。スライチ、口を開けてくれ」
スライチがぷよぷよと揺れながら大きく口を開けて、俺が通れるくらいのサイズになる。
「よっと」
真っ暗な空間に足を踏み入れるのは少し勇気が必要だったが、スライムたちと思考を共有しているためか、不思議と不安はなかった。
「おぉ、ここは魔物の森か」
異空間を通り抜けると、すぐに森に出た。
ここは俺が初めて異世界に来た森で間違いなさそうだ。
「おかえりー」
振り返ると、別のスライムが大きな口を開けてぷよぷよしていた。
こいつが異空間を繋げてくれたようだ。
「おう、と言ってもまだ一日も経ってないけどな」
周りを見るとテイムしたスライムやゴブリン、コボルトたちが集まっている。
「ゴブリンやコボルトは魔法は使えるのか?」
「ぼくらのステータスもトキヤは見られるよー」
「そうなのか?」
スライムに促され、ステータスをオンにする。
すると、ステータスの隅の方に『テイム』という欄があることに気がついた。
それを開くと、テイムした魔物、そして魔物たちのステータスや能力の一覧が表れた。
「おお、これでお前らのステータスも把握できるんだな」
とても便利なシステムだ。
俺のようなテイマーにはおあつらえむきだな。
「どれどれ……」
ステータスをスライドして目を通していく。
事前にスライチから聞いた通り、魔物も個体ごとにレベルやステータスが存在しているようだ。
特に目が引かれたのが、
「お、魔法の欄がある。これが魔物の能力か」
俺のステータスには『魔法:テイム』しか書かれていないが、魔物たちは種族によっていくつか魔法が使えるようだ。
「よく考えたら、俺はレベルが上がってもまだテイムの魔法しか習得してないってことだよな……テイマーは冒険者適性がないってのも、案外的を得てるかもしれない」
しかし俺には魔物たちがいる。
「コボルトは……風魔法が使えるのか。えーと、〈ウィンドブレイク〉!」
俺が手をかざして叫ぶと、刃の形をした白い風が吹き荒び、勢いよく目の前の木々を薙ぎ倒した。
「おぉ! 結構威力があるな」
これは広範囲の攻撃に使えそうだ。
「ゴブリンは、身体強化か。〈フィジカルアップ〉!」
身体強化の魔法を唱えると、全身に力がみなぎる。
試しに、薙ぎ倒された大木を掴むと、軽々と持ち上げることができた。
「すげぇ、超人並みのパワーだ」
これもまた使い勝手が良さそうな魔法だ。
そこらの野盗に襲われたくらいなら、この魔法で一網打尽にできそうな気がする。
「お、炎魔法もあるじゃないか。それに移動魔法! 足が早くなるのかな」
こんな調子で魔法を試しながら、夜は更けていった。