………


「嘘でしょ」
「なにこれ…」

 ピィちゃんの世話をするために焔消山から学校に戻って来た。開けた部室の扉の前で僕たち4人は絶句する。
 踏み荒らされて散乱した資料。乱雑に散ってしまったご飯。そして、ぐったり倒れるピィちゃんの姿。

「…ピィちゃん!」

 誰よりも先に不知火さんが駆け寄った。その声を皮切りに僕らは急いで倒れた鳥籠に駆け寄った。

「……」

 普段とは打って変わって鳴き声すら発さず、静かに動かない。
 まとわりつくような生暖かい夏の風が廊下から部室へどんよりと広がる。


「不知火さん、ちょっといい?」

 十鳥先生が不知火さんの肩に手を置き、そのままピィちゃんを鳥籠から取り出す。

「……」

 十鳥先生は触診するように軽く触れる。時折、ピィちゃんの吐息の音を聞きながら。

「…だめ、もうほとんど息してない。押した時の反応も弱いし、呼吸も不規則でかなり乱れてる」
「そんな!」
「先生、どうにかならないんですか!?」

 僕と有真がやり場のない怒りを抱えて、先生に食ってかかってしまう。先生は何も悪くないのに、淡々という姿に少し気持ちが昂ってしまった。

「……」

 しかしそれでも先生は黙って俯くだけ。そこで気がついた。先生だってきっと…。
 どうしてこんなことに?僕らの頭にはそれしかなかった。

「運が悪かったとしか言えない。最近は飛ぶ練習で翼も少し酷使していたし、なによりこの子は台風の日に拾ったから、地面に叩きつけられてるんだとしたら、衝撃に弱くなっててもおかしくない」

 僕がピィちゃんを拾ったあの日、たしかにぐったりと地面に倒れていた。同じ部分を強打したのだとしたら、それこそ次助かる保証はどこにもない。

「でも、なんで鳥籠が地面に落ちてるんですか。窓も開いていないし落ちないような位置に置いてあったはずじゃないですか!」
「そ、そうだよ。有真の言う通り」

 そもそも鳥籠を不注意で落ちるような位置に設置することはまずない。それはこの場にいる全員なら知っていた。

「偶然じゃない、かもね」

 十鳥先生が部室の荒れようを見てそう言う。目線の先の荒れようは明らかに誰かが侵入した形跡があった。