「そういえば、赤翼くんは不知火さんの秘密知ってたんだよね?あの青い炎についても知っていたのかい?」
「いえ、知らなかったです」
「私もよくわかんないんです」
車窓の外の過ぎ行く街並みを望みながら、話題は先程の青い炎の話へ。
「以前、母から聞いたことがあるのですが、感情が昂ったり気持ちがこもった涙、助けたいと心から願った涙には自分以外を癒す力があると」
「なるほどねぇ」
「もう1回出してみろって言われると難しいと思います」
「まぁそうだよね。でもほんと奇跡だよな。助かってよかったな、有真」
「うん」
すると、助手席からわざわざ首を後ろに向けてニヤリと笑う翔。悪戯っ子のような嫌な笑い方。
「気持ちがこもったってことは、有真が不知火さんにそれだけ想われてるってことじゃない?」
「「なっ!」」
僕と不知火さんの声が被る。翔のやつそんなこと言うためにわざわざ!
「い、生駒くん!別に全然!まったく!本当にそんなんじゃないから!」
「不知火さん。そこまで否定されると…」
「いやいや、赤翼くん!本当だよ!?1ミリもそんな感情抱いてないからね!」
「そ、そうなんだ」
「あははっ!有真フラれてやんの!」
「赤翼くん、先生でよかったら話聞くよ」
「もうほんとなんなんですか!?」
僕の悲しみに満ちた声が広がる。もしかしたら、なんて淡く抱いていた何かが音を立てて崩れた。
「ふふふっ」
そんな僕らの会話を見て、不知火さんが可笑しそうに笑った。久しぶりに見た笑顔。話せていなかったのもあるけれど、どことなく最近は暗く見えていたから。
「そろそろ学校だよー」
「はーい」
「ピィちゃんのご飯変えなくちゃね」
「みんな出かけたから寂しがってるよ、きっと」
こんな風に笑い合える状態に戻れてよかったなと心の底から思った。