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「──つまり不知火さんは不死鳥の血を引いているってこと?」

 十鳥先生が車を運転しながら、目線を外すことなくそう言った。

「はい、そうです」

 不知火さんが少し疲れた様子で力なく答える。
 不知火さんの涙が燃え盛る木々を癒しきった後、すぐにレスキューの人達が到着した。救助を要請されたにも関わらず、滑落した僕の体に傷1つないことに驚いていた。あまりの無傷っぷりにイタズラかと疑われたようだが、十鳥先生が必死に弁明してくれて事なきを得た。
 十鳥先生は最後まで、不知火さんが出した青い炎のことを絶対に言わなかった。事情がわからない中で不知火さんを信用して、喋らないという選択をしたあたり、やはり優しく生徒思いの先生なんだなと思った。
 そんなひと悶着があった後の帰りの車内の中。今は不知火さんが自身の体のことについて十鳥先生と翔に説明し終えたところだ。
 不知火さんは人間でありながら不死鳥の血を引いているということ。傷を受けると炎と共に回復するということ。拾ったピィちゃんも不死鳥だということ。僕がその事実を全て知っていたということ。今まで隠してきたことを全部、包み隠さずに話した。

「はぇー、長く生き物と関わってきたけど、そんなことあるんだねぇ」
「俺もちょっとびっくり。ピィちゃんも不死鳥だったなんて」

 運転席に座る十鳥先生は感嘆の声をあげ、その隣の助手席に座る翔は驚いた様子だった。無理もないだろう。僕も初め聞いた時はかなり驚いたものだ。

「……」

 2人の反応を見て、不知火さんが膝の上でぎゅっと握りこぶしを作った。体も少し小刻みに震えている。
 今まで不知火さんは、いや先祖代々、ずっと隠して生きてきたから怖いんだ。バレてしまって不安で仕方ないはず。

「…!」

 だから僕は彼女の膝の上に置かれた小さな握りこぶしの上にそっと手を置いた。大丈夫、と言うように。少しでも力になれるように。

「ありがとう」

 隣にいる僕にだけ聞こえるような声で不知火さんは小さく呟いた。