「はぁー!よかったぁ!救助の人に青い炎のこと言わなくて」
「いや、ほんとですよ。というか先生、何回かボロを出しそうになってましたよ?」
「い、生駒くん、言うじゃないか。私は仮にも先生なわけだし、嘘つくのに全然慣れてないんだよ、うん」
「単に取り繕うのが下手なだけでは?」
「そんなことないよ!?」

 僕たちが不安に思っていると、2人は柔らかい雰囲気で話し始めた。

「不知火さん」

 その雰囲気のまま、十鳥先生は不知火さんに声をかける。

「不知火さんが不安に思ってること、私なんとなくだけどわかる。私はね、大事な生徒を守りたいと思うよ。いち部活のたかが顧問だけど、私はここにいるみんなのことを大事な生徒だと思ってる」

 十鳥先生の優しい声色。それはいい意味でいつもと変わらない。お茶目で少しだらしなくて、でも誰よりも僕たちのことを考えてくれている。そんな先生らしい言葉だった。

「今、不知火さんの周りにいるみんなは必ず不知火さんの味方だから」

 僕と翔はその言葉に黙って頷く。
 不知火さんの秘密を他言しない。それは僕たちにとって不知火さんが大切な友達だから。当たり前だけれど、そんな当たり前が繋がって友達になっていくんだと思う。

「先生、生駒くん、赤翼くんも。ありがとう」

 不知火さんは深々と車内で頭を下げた。

「あははっ。任せてよ、俺口は固いから!あとは先生がボロを出さなければ…」
「えぇ?私!?私は大丈夫だよ。君たちと違って大人だから」
「1番不安なんですけど」
「赤翼くんまで何を言う!」

 車内に笑い声が響く。
 きっと、不知火さんがどんな人間でもここにいる人たちはみんな優しく迎えてくれたんだろうな。そう確信できる笑顔だった。