「うわっ」

 その炎はどんどん僕の体へと広がっていき、痛みのある患部を強く焼いていく。青白く暖かいその熱がみるみるうちに傷口を癒やしていった。
 あらぬ方向に曲がってしまっていた腕も、ぱっくりと切れていた脚も、打ち身のような痛みがあったお腹も、全てなにもなかったかのように元に戻っていき、痛みが引いていく。
 本当に不思議な現象だった。不知火さんの体でのみ起こる修復現象が、彼女の涙から出る炎で僕の体にも起こっている。
 傷が治り、物が考えられるようになる。身体中に広がるその青い炎は僕の意識すら回復させてくれた。
 覚醒した意識で辺りを見渡す。轟々と燃え盛る業火。木々の焼けた匂いと焦げ付く黒煙の黒。
 不知火さんはきっと、僕を助けるためにここまで来てくれたんだ。木々を焼き尽くすほど自分を傷つけて、自分の体のことがバレるのも厭わず。
 その気持ちに胸が熱くなる。感動やら嬉しいやらで言葉にならない。

「先生、あれ」
「青い炎?」

 僕と不知火さんの頭の上、崖の上から2人の声が聞こえる。
 不知火さんが流す青白く燃える涙の炎は、僕の体を超えてどんどん広がっていった。業火が灯る草花や木々たちに青い炎が移り、まるで火を消し去るように包み込んでいく。
 ぐんぐんと青白い炎は勢いを増し、空に立ちのぼる有害な黒煙にさえ、渦を巻いてまとわりついた。

「っ!私たちにも!?」
「うわっ、熱っ!…くない?」

 十鳥先生や翔を巻き込む蒼炎。この場にある傷付いたもの全てに青が灯る。青い炎はその全てをことごとく癒していく。炎が作るその光景は美しく、キラキラとしたイルミネーションのようだった。
 時間にしてそれは数分の出来事。しかしその間、彼女の暖かさに触れた、そんな気がして心地いい気持ちを抱いた。

「…不知火さん」
「っ!赤翼くん!!」

 僕の意識があることにようやく気がついたようで、泣いて真っ赤に晴らした目をまん丸にしてこちらを見つめてくる。

「不知火さん、ありがとう」
「赤翼くん!ごめん、ごめんなさい!私、素直になれなくて!赤翼くんを傷つけること言っちゃって!心配してくれたのに!優しくしてくれたのに!」
「ううん、僕の方こそごめん。不知火さんに寄り添えなくて」

 不知火さんのボロボロと落ちる涙を指ですくう。青白い炎が僕の指を伝って消えた。

「不知火さんは僕の友達だから。やっと謝れて、やっと伝えられて嬉しい」
「私も!私も赤翼くんと友達でいたい!」
「…あははっ、友達だよ」

 そんなのずっと前からなのに。当たり前の言葉に少し可笑しく思った。
 ここら一帯に広がっていた青い炎が消える。焼けた木々も硝煙の匂いも僕らの傷も、なにもかも。全てが元通りになっていた。