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 身体中が痛い意識が朦朧とする。
 なんでこんなに辛い状態になってるんだろう。あまりの激痛に思い出すこともできない
 薄暗い意識の中で感じたのは、まるで炎の中にいるかのような熱気と灰を吸い込んだような息苦しい感覚。体は痛みでギシギシと悲鳴をあげ、思考すらままならない。
 あぁ、死んでしまうのかな。このまま深く暗いところまで意識を落としてしまえばきっと楽だ。痛みにも苦しみにも耐えなくて済む。あぁ、このまま──
 その刹那、頭の中に声が1つ過ぎった。

『赤翼くん!』

 この声、不知火さんの声?そうだ…僕はまだ不知火さんに謝れてない。
 空気を読まない発言をした、僕が悪いのに。今日の今日まで問題を先延ばしにしてきた。そのツケが今回ってきている。
 覚醒していない意識の中で、嫌だという気持ちだけが浮かびあがった。不知火さんに謝れないまま終わるのは嫌だ。僕は不知火さんの友達だから、きちんと謝って仲直りがしたい。
 そして出来ることなら、また一緒に──

「はぁ…はぁ…」

 痛みに滲む目を開ける。なぜか目の前には不知火さんがいて、はっきりと彼女の姿を視認することができた。

「赤翼くん!赤翼くん!」

 彼女の声がふわふわとした頭に木霊する。滅多に聞かない不知火さんの大きな声。潤みを感じる少し涙混じりな声。
 どうして謝っているの?謝るのは僕の方だ。
 狭い視界に映る不知火さんの姿を見ながら、声を出そうと喉を絞める。

「……」

 声が出ない。あぁもうダメだ。本当にダメだ…。
 ごめん、不知火さん。酷いこと言ってごめん。気持ち考えられなくてごめん。次はちゃんと、不知火さんの言葉も聞くから。だからまた一緒に楽しく──
 僕の体の感覚はもうない。まるで形あった物が壊れるように、意識も底に落ちきった感覚があった。命が尽きる瞬間を悟った。
 あぁ…意識が消える…消える…消える──
 その瞬間、僕の頬に温かい何かが触れた。