「みんなー、いるー?」

 ガララッ!と勢いよく部室の扉が開く。十鳥先生が部室に入ってきた。

「あっ!と、十鳥先生!どうしたんですかー?」

 それを見て生駒くんが助かったと言わんばかりに声をかける。

「…みんなどうかしたの?ま、いいや。ピィちゃんの怪我についてなんだけど」
「怪我ですか?」

 何かを察したのか一瞬だけ気にするも、十鳥先生はすぐに本題に移ってくれた。

「うん。翼の部分を怪我してたと思ってて、ピィちゃん上手く翼を広げられないでしょ?」
「はい」
「それでね、そろそろ回復してきたと思うからボチボチ飛ぶ練習をさせた方が良いかなって思うんだ」
「ピィ!」

 飛ぶという言葉に反応したのか、ピィちゃんが少しだけ元気良く鳴いた。

「いきなり外だと危ないから最初は室内がいいみたい。ということだからほら早速準備して!」
「準備?」
「いいからいいから!男の子二人は部室の机を端に寄せて。不知火さんは落ちてもいいように柔らかめのクッションとか置くの!ほら、早く!」
「は、はーい」

 そう言った先生に促されるまま私たちは準備に取り掛かった。さすが十鳥先生。飼育部の顧問だった人だからか、やはりいろんな知識持っているようだ。指示を飛ばすその姿はすごく手馴れていた。


………


「先生、敷き終わりました」

 生駒くんの言葉に頷く先生。ダンボールやクッションを敷いた部室の床。

「うん、じゃあこの辺に置いて…」

 窓際にピィちゃんが入った鳥籠を設置する先生。

「3人とも、入口に立ってて」
「はい」
「わかりました」

 指示通り窓際の向かい、部室の入口の前に3人で立たされる。

「ピィ?」

 首を傾げるピィちゃん。大丈夫、私たちもいまいちよくわかってない。

「先生、この後は?」
「うん、今から籠の扉を開けるから、3人はピィちゃんの名前を呼んで欲しいの。親鳥も実際こうやって鳴き声で呼びかけて飛ぶ練習させるんだって」
「なるほど」

 不死鳥の子だから親鳥とかはいないけれど、本能的な部分は同じかもしれない。やってみる価値は十分にあった。