「…有真」

 ポンっと肩に手を置かれる感覚。隣を見ると翔が悲しそうな表情をしていた。

「フラれたな。ドンマイ、さっきの饒舌っぷりは俺から見ても普通にキモかったぞ」
「そ、そんなんじゃないよ!」

 不知火さんが出て行ったあとで傷つく言葉を投げてくる翔。
 別にフラれるとかそういうのじゃない。ただなんとなく…僕と同じ独りぼっちの匂いがしたんだ。

「じゃあ放課後どこに誘おうとしてたんだよ」
「ぶ、部室だよ」
「あー、お前が最近通ってるところ?」
「うん。未確認生物研究部」
「あれ?そんな部活あったっけ?」

小首を傾げる翔。…痛いところを突いてくるな。

「…ないよ。僕が勝手にそう呼んで適当な部室に入り浸ってるだけ」
「ないのかよ。てかどこの部室使ってんだよ」
「昔、生物・飼育部があって、前の3年生が卒業してなくなったんだ。だから裏庭に近い教室が1つ、部室として残ってる」
「…てことはお前は勝手にそこを使ってると」
「そういうことになる…」
「生徒会にバレたら普通に退去させられるな」
「…それまで儚い命を全うする」
「部員も集まらなさそうだしな」
「余計なお世話だよ」

 我が学園の部活動は最低3人とされているため、今の僕は部室を無断で使うならず者だ。
 でもそこには先輩たちが残したロマンがあり、動物の生体をまとめた冊子や飼育箱などを見るだけでも楽しい。バレるまで僕はそこにいるつもりだ。
 呆れ顔の翔を尻目に、不知火さんにフラれたことを悲しみつつも僕はお弁当の唐揚げを頬張った。