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 ガララッと教室の引き戸を開ける。部活は楽しくても学校生活は特に変わらず、いつも通り静かに自分の教室に入る。

「翔くん、今度放課後遊びに行こうよ!」
「放課後かぁ」

 数人の女の子に囲まれている生駒くんの姿が目に入った。
 彼があんな風に女の子たちに囲まれるのは入学してから度々見かけてきた。どうやらかなりモテるようだ。
 私はそういったことはわからないけれど、あれはあれで青春だと思う。恋愛は私にとっては無縁のものだ。

「放課後はちょっとね」
「えー、最近つれなくない?アルバイト?」
「部活があるから」
「え、生駒くん部活やってたっけー?」

 本当に大人気だ。見る人が見たら羨ましい光景なんだろうな。

「……」

 彼のことを横目で見ながら自分の席に向かう。そんな彼の表情はどこか苦笑いに近かった。
 自席に目を向けるといつもは隣にいるはずの赤翼くんの姿がない。
 今日はまだ赤翼くん来てないんだ。いつもはもう少し早い気がするのに。

「あっ…」

 ボーッとした思考で思い出す。ピィちゃんのご飯が少なくなってたんだった。
 でも生駒くんは絶賛取り込み中。

「うん、最近初めてさ」
「えー、何部何部?」
「運動部とか似合いそう!」

 彼の方を見るも、話が盛り上がってる。声かけづらいな。ま、いいか。放課後言えば。
 そう思った矢先。

「あっ」
「ん?」

 生駒くんとパチッと目が合った。
 ほんの数秒、しかしその数秒の沈黙で、女の子たちも私の存在に気がつき目を向ける。

「不知火さん、どうかした?」
「あ、えっと」

 目が合ってしまったなら仕方ない。

「ピィちゃんのご飯なんだけど、お肉が少なくなってたよ。補充しないとって伝えたくて」
「ほんとに?ありがとう。助かるよ、放課後に俺がやっておくね」

 その言葉を聞いてこくりと頷いてまた自席へ歩みを進める。

「え、生駒くんもしかしてあの時放送してた変な部活入ったの?」

 すると女の子のうちの1人が生駒くんに尋ねる。
 変な…か。

「うん。有真もいるし、動物はそこそこ好きだから」
「へぇ…てか不知火さんも翔くんと同じ部活に入ってたんだね」
「えっ」

 ちょっと明るめの気の強そうな子が私に言葉を投げ、自然に話しかけてくる。
 同じクラスで少し派手な見た目をしている。羽折(はねおり)さんという女の子。
 染められたアッシュの髪の毛に着崩した制服。私とは正反対の正しく女子高生といった出で立ちの子だ。
 青春を謳歌してそうな感じが窺える。

「……」

 話しかけられることは別に嫌ではないけど、なんて返したらいいかわからなかった。
 純粋な会話と言うよりも、なんでお前なんかが?と言った雰囲気を感じる。

「う、うん」

 とりあえずこの場から離れたくて生返事だけ言ってそそくさと座る。

「えー、私も入っちゃおうかなー」
「動物興味あるの?」
「ううん、全然?でも翔くんがいるなら!」
「あ、あはは」

 その後、何事も無かったかのように彼女らの会話が続いた。
 正直、いい気分はしなかった。