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「…ここか」

 十鳥先生から受けとった地図を元に、少し駅から離れた閑静な住宅街に到着する。
 周りの家よりも少し間が離れている一軒家。どうやらここが不知火さんのお家らしい。
 十鳥先生が連絡をしたところ、許可をいただけたようで放課後に不知火さんのお家に赴くことに。

 ピンポーン

「……」

 緊張しつつもインターホンを鳴らす。

 そういえば僕、初めて女の子の家に来たかも。
 要らぬ思考が頭を過り、緊張がさらに加速してしまった。

『はーい』

 緊張を遮るように女性の声がインターホンから聞こえる。

「あっ、お電話あったかと思いますが、十鳥先生の代理でお伺いいたしました。赤翼有真というものです!」
『話は聞いてます!ちょっとお待ちを…』

 パタパタとインターホン越しに廊下を歩くスリッパの足音が聞こえた。

 ガチャリ

 程なくして玄関の扉が開く。不知火さんと同じ茶髪の女性。不知火さんのお母さんだろうか。

「わざわざごめんなさい!雛子の母です」
「い、いえ…これくらいは全然」

 ペコペコと頭を下げあう。お互いに日本人だなと思った。

「部費ですよね。はい、これです」
「ありがとうございます。たしかに受け取りました」
「はい、お願いしますね」

 チャリっと茶封筒の中から小銭が音を鳴らす。小額だが、金銭は慎重に扱わなくては。

「それにしても雛子が部活なんて驚きました。入部していると知らなかったので…」
「いえ、無理もないかと。つい先週立ち上げたばかりですので!」
「そうなのですね」

 お母さんから雑談を振ってくる。本音を言えばここに来たのは不知火さんの様子が気になるからだ。軽い雑談も渡りに船といったところ。

「あの…雛子さんのご様子は?」
「…熱は少し落ち着いてきています」

 思い切って不知火さんのことを伺うと淡白に返されてしまった。それはどこか距離を置いているような感じだった。