「赤翼くん、生駒くん、不知火さん」
「あれ?十鳥先生?」

 そんな風に会話をしながら2人でお弁当を食べ進めていると、教室の後ろから聞き慣れた声。振り返ると、十鳥先生が入室してくるところだった。

「あれ?不知火さんは?」
「今日は風邪でお休みです」
「あら、そうなの?」

 ポニーテールを揺らしながら教室に入ってくる十鳥先生に対して、不知火さんが休みであることを翔が伝える。

「どうかしたのですか?」
「ん、みんなにお願いがあってね。部費を徴収させてもらえないかなーって」
「…部費?」
「そそ。いやぁ実は部活を申請した際に、一百野さんにご飯代とかはどうするんですか?って聞かれたんだよね」
「たしかに」
「今までどうしてたんですか?」
「私のポケットマネー」
「え、そうだったのですか?」

 翔が驚いた表情をする。僕もあまりその辺を考えていなかった。さすがに先生に負担をかけすぎるのはよくない。


「いやそれ自体はいいんだ。ただ、一百野さんに素直に言ったら、部にかかる費用に関しては生徒会の方で予算管理しないといけないらしくって。私の懐からではなく、予算が出るまでは部費として必ず徴収してくださいと怒られてしまって」
「生徒会も大変なんですね」

 お金絡みは揉め事としては大きい。先生のポケットマネーというのも生徒会としては許可できないのだろう。

「来月から予算を調整してくれるみたいだからそれまでの間は少ない金額でもいいので責任のために徴収して欲しいみたい」
「なるほど」
「それでと思ったのだけれど不知火さんがいないんだよね。生徒会への報告もあるけど、とりあえず私が立て替えておこうかな」

 それだとまた話がややこしくなりそうだな。

「…あっ!」

僕は少し考えてふと思いつく。

「あの、彼女の分は僕が回収してくるというのはどうでしょうか?彼女のお見舞いもしたいですし」
「お見舞い?」
「僕が彼女の風邪の原因を作ってしまったかもしれなくて。ちょっとというかかなり心配してて」
「んー」

 十鳥先生が考える素振りを見せる。
 思いつきで言った案。さすがに迷惑だろうかとかいろいろ考えたが、なんとなくそうしたいと思った。

「ご迷惑かもしれないし、部活動の件だから私から連絡してみるよ。もし不知火さんの家の許可がでたらお願いしてもいいかな?」
「はい。わかりました」
「ごめんね、お金絡みの話だし私も行かないといけないんだけど、今日は学内業務が立て込んでて…」
「こんな時の部長ですので」
「お、有真が部長面してる」
「実際そうだから」

 そうしてとりあえず僕ら2人は先生に部費として小額支払った。うーん、部活を運営するのも大変なんだな。