「別に呼ばれるのは気にしてない。昔からそうからかわれるのは慣れっこだ」
「そんなのに慣れるなよ。言う方も言う方だが、お前もお前で隠すとかしろよ」
「笑いたきゃ笑えばいいよ」
「その点だけは本当に譲らないな、有真は。ありえないと言われて諦めないとは」

 自分の夢を笑われて諦めるほど僕は大人な考えは持っていなかった。おかげで僕に話しかけてくるのはいつしか幼馴染の翔以外いなくなった。僕自身が遠巻きに噂される分には構わない。さっきも言った通りそんなのは慣れっこだ。
 ただ、翔まで変なやつだと思われるのは困る。僕と絡むことで迷惑をかけている自覚は正直ある。でもこうして話しかけてくる優しさについ甘えてしまう。

「でも夢に対する羞恥には鈍いのに、クラス中から好奇の目で笑われるのは恥ずかしいのな?さっき顔赤かったぞ」
「ポリシーを笑われるのと、行動を笑われるのは違うでしょ。翔も公衆の面前で怒られてみなよ。恥ずかしさで死にたくなるから」
「あははっ、絶対に嫌だ」

 笑いながらお弁当を頬張る。やっぱりからかいに来てるじゃないか。

「まぁ、そんなことで死にたくならずに寿命分は全うしてちゃんと生きなよ。どんな生き物も必ず死ぬんだからさ」
「どんな生き物も?」
「あっ、やべ」

 ピクリと僕はその言葉に反応する。翔は口を滑らせたという感じで口元を抑えた。

「この世のどんな生き物もほとんど解明できてないんだよ?だから必ず、なんてことは言えない」
「いや、そういう意味じゃなくてな?」
「それに──」

 知った気になるのは人間のおごりだ。この世にはまだまだ解明できていない生き物がたくさんいる。
 困った表情をする翔だったが、構わず頭の中の知識の引き出しを開ける。こういうところが遠巻きに見られる所以なんだろうな。

「不老不死の生き物は存在するよ」

 僕が知識をひけらかそうとすると、隣の席からガタリと机と椅子を鳴らす大きな音がした。