「んでまぁ、事情くらいは聞こうと思ってね」

 どうやら心配してくれた様子。
 しかし翔と言えど、不知火さんと不死鳥の件は隠さないといけない。さっきから見通してくる、翔相手にボロを出さずに慎重に僕は語り始めた。

「いやぁ、実は──」


………


「…なるほど。拾った雛鳥を助けてあげたくて部を発足したいってことなのか」

 サッと経緯を説明し終えると翔は納得した様子で反芻する。ピィちゃんと不知火さんの件はどうやらバレずに済んだようだ。

「でも不知火さん、動物好きだったんだ」
「…う、うん。嫌いじゃない」

 ただ、説明の過程で不知火さんが僕顔負けの生き物好きで部活をすごく作りたかった人という人物設定になった。違う、上手い言い訳が思いつかなかったんだ。
 不知火さんからジト目の視線を貰う。僕はそれに苦笑いで返した。

「その子が保護した鳥?」
「うん、名前はピィちゃんって言うんだ」
「ピィ!」

 元気よくピィちゃんが挨拶をする。

「あはは、可愛いな」

 素直なピィちゃんに翔が笑顔を向けた。微笑ましい翔の笑顔は、なんだかんだ言いながらも僕と一緒にいて、捨て犬や野良猫に向けてきた微笑みと同じ。昔から変わらない僕の隣にあった微笑みだ。

「今日までに3人集まらないといけないんだろ?」
「正式じゃなくても目処を立てられれば」
「俺入るよ」
「…えっ!?」
「え?」
「ピィッ!?」

 思わず2人と1羽が驚きの声を上げる。まさか翔から言ってくるとは思わなかった。

「普段の有真は授業よりも生物のロマンがーとか言って、陰キャ思考でボーッとする癖に、生物のことになると急に積極的になるよね?」
「い、言い過ぎ!」
「どうせ今日だけじゃなく、ピィちゃん?のために手段を問わず強引に行動してるんじゃないの?不知火さんのことを困らせてると見た」
「ぐぬぬっ」
「そ、そうなんだよ!生駒くん?よくわかったね」
「有真とは長い付き合いだからね」

 ほんと翔はなんでもお見通しだな。むしろ怖いまである。エスパーか?

「有真のお目付け役兼部員としてさ、ぜひ入部させてよ。未確認生物研究部に!」

 翔の心遣いが本当にありがたい。なんだかんだ僕絡みの話は建前だろう。最初からそのつもりだったのかもしれない。
 僕は不知火さんと顔を突き合わせる。僕は大丈夫という意味を込めて頷いた。彼女はほんの少しだけ安心したような顔で頷き返す。
 彼女の秘密がバレなければ、何も問題はない。むしろ翔は唯一僕と話してくれる存在、幼馴染なのもあってこの上なく信用できる。部員としてはもってこいだ。

「…翔、これからよろしく!」
「生駒くん、よろしくお願いします」
「おう、2人ともよろしくな!」

 これで3人目の部員が決定した。