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「あ、赤翼くん…本当にやるの?」
「なるべく多くの生徒に聞いてもらうにはこの方法しかないって昨日言った通りだよ」

 次の日の金曜日、お昼休み。とある教室の廊下前で話し合う。なんとしてでも今日中に1人、部員になれそうな人を確保しなくてはならない。

「アポ無しはさすがにまずいってば。いや、冗談だと思ったの!でもまさか本気だなんて」
「僕は常に本気だよ」
「止められなかった私自身が憎い」
「いいから腹括って!これもピィちゃんのため!」
「それ言えば私が動くと思ってない!?」

 不知火さんが観念したように、がっくりとうなだれた声を出す。

「じゃあ、行くよ!」
「うぅ…」

 ガチャっと重厚な扉を開けた。放送中というランプが点る教室。放送室の中へ。


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『さぁ、続いてはお便りコーナーの……あれ?誰?うわぁっ!』
『え、君たち誰!?ここになんの用!?』
『すみません、繋がってるマイクどれですか?』
『あ、赤翼くん!やっぱやめようよ!間違いだよこれ!』

 教室のスピーカーからキーンというハウリングの音と共に聞き慣れた声が聞こえる。

「…え、有真?」

 この声の主、赤翼有真に俺は今さっきお昼ご飯をフラれたばかりだ。スピーカーから流れる幼馴染の声。もう1人は女の子の声だ。これもしかして不知火さん?謎の構内放送とその声の主に驚く。
 もしかして有真と不知火さん、お昼の放送ジャックしたのか?

「翔くん?どうしたの?」
「いや、有真の声が…」
「え?聞こえた?」
「わかんない」
「それより生駒くん!今度私たちと一緒に──」

 有真がいないといつも何人かの女子に囲まれてしまう。この子達と食べるのが嫌なわけではないが、お昼ご飯は少人数で落ち着いて食べたい。