「そ、それなら!」

 不知火さんが唐突に声を上げる。

「ここの利用申請さえすれば使ってもいいということですか?」
「いや、その件なのだが…」

 一百野会長がバツが悪そうに頬を掻く。

「本来なら何も問題ないのだが、今回の場合は少し特殊でね」
「特殊?」
「まぁ、簡単に言うとそこにいる小鳥ちゃんが原因なんだ」

 そう言って一百野会長はピィちゃんを指さす。

「ピィ?」

 ピィちゃんは何もわからなさそうに首を傾げた。

「先生たちの間でも話題になってたようだけど、生物・飼育部の部室から鳴き声が聞こえると生徒会の方にも連絡があってね。で、実際十鳥先生に確認したところ…」
「私が口滑らせちゃった」
「おかげで大体の事情は把握できました」

 十鳥先生、なにしてんの。いや、一百野会長は交渉力高そうだし、引き出された可能性もあるな。僕と不知火さん、そしてピィちゃんまでもがジト目で見つめる。

「そ、そんな目で見ないでよ!」

 3人?からの視線で顔を覆うように隠した十鳥先生。

「…その経緯と教室利用になんの関係が?」

 不知火さんが冷静に話を戻す。

「生徒会としても放課後の活動に関しては寛大に対応したいから、基本的には申請さえあれば活動内容は深く問わない。でもさすがに外部から生き物を受け入れてお世話をするというのは、個人的利用の範疇を超えているかなと。命を扱う以上、生徒会としても何かあってからでは遅い」
「…たしかに」

 一百野会長の言うことはごもっともだった。美術室で絵を描きたいという理由とはわけが違う。学園が一組織である以上、ルールを守ることは避けては通れない。

「部活動であれば責任が発生するから問題ないのだがね」
「…部活」

 僕と不知火さんは顔を見合わせる。不知火さんは不安そうな表情をしていた。
 ここが利用できなくなれば、ピィちゃんをお世話する場所がなくなる。それは困る。この子はまだ怪我が治っていない。