「部活動なら問題ないのであれば、私たちを部として発足するのはどうですか?」
「あ、それいいね!私顧問になるよ!」

 不知火さんの発言に乗っかる十鳥先生。だけどそれは難しかった。

「現状、部活動発足に必要な人数は3人以上と決まってるんだよ。十鳥先生は知っているでしょう」
「し、知ってたよ!」

 そう、部活動として数えられるのは部員3名からだ。案は一蹴されて振出しに戻る。

「君たち2人しかいないみたいだから、部として利用は許可できない」

 部室に不穏な空気が流れる。夏の湿気のようにまとわりつく嫌な空気。

「ピィ…」

 黙る僕ら2人を見てピィちゃんも不安を感じた様子。弱々しく悲しく鳴いた。


「…しかし、2人の活動内容自体は否定するべきものではないと私個人的には思う」
「え?」
「命の大切さを学ぶというのは学内の授業だけでは得られない貴重な体験だからね」

 僕ら2人を見かねたのか、それとも本心なのか。あまり表情を変えずに一百野会長がそう言った。

「ほんの少しだけ時間をあげたい。規定の部員数まであと1人、目処だけ立ててくれないか?明日、金曜日の放課後、生徒会の会議でこの件が議題に出てしまうからそれまでに」
「金曜日の放課後…」

 もう1日もない、時間でいえば本当に難しい。でも一百野会長がくれた寛大な処置。一筋の光だ。

「不知火さん」

 僕は決意を持って不知火さんを見た。不知火さんもこちらを見ていて、その表情は僕と同じ腹を括ったと言った顔。

「うん!」

 不知火さんが力強く頷く。どうやら気持ちは一緒なようだ。

「一百野会長、わかりました!絶対に金曜日までになんとかします」
「…わかった。部として発足できそうという目処だけでいい。とにかくあと1人、お願いしてもいいかな?」
「はい!任せてください!」
「うん、2人とも頼んだよ。では十鳥先生、その算段でいきましょう。私も会議でここを守れるように頑張るので」
「一百野さん!ありがとう!ありがとう!」
「先生も発足されたらまた顧問ですからね。今日みたいなことないように」
「ぜ、善処します!本当にありがとう!」

 そう言って一百野会長はこちらによろしくとでもいうように手を振って十鳥先生と部室を出ていった。出ていく瞬間、十鳥先生が目配せする。やってやったぜと言わんばかりのウインク。

「…十鳥先生なにもしてなくない?」
「たしかに」

僕らはそんな姿を見て苦笑いした。