「え?生徒会長がどうしてここに?」

 一筋の風が吹き抜けた後、彼女の存在を不思議に思った様子の不知火さん。ピィちゃんと同じように首を傾げて尋ねた。

「不知火さん、実はこの部室は僕らが勝手に使ってる状態なんだ」
「勝手に?」
「本来この部室は生物・飼育部のものなんだ。でも生物・飼育部って去年なくなっちゃって…だからこの部室自体は空き教室っていう扱いなんだよね。それで──」
「放課後の空き教室に関しては生徒会が管理しているんだ。各部活動や個人的な理由による教室の利用は、申請書を出してもらう必要があるんだ」

 僕が説明しようとすると、一百野会長が割り込んで話を引き継ぐ。

「なるほど、今私たちは潰れた部の部室を許可を得ず勝手に使ってるということですか」
「固いことを言うとね」

 無断使用のような形になってしまったのは、僕が勝手に入り浸っていたせいだ。

「一百野会長、教室利用の申請って個人的な理由でもいいのですか?」

 しかし一つだけ、今の話の中で気になった部分を一百野会長に聞いてみた。

「あぁ、問題ないよ。実際に美術室で絵を描きたいという理由で1人の生徒に許可しているし」
「え、一百野さん、そうなの?」
「十鳥先生が知らないでどうするんですか」
「あ、あはは…」

 一百野会長はやれやれと言った様子で1つため息をつく。

「教室利用のことを生徒が知らないのはまだしも、先生が知らないのは些か問題かと」
「いやぁ、面目無い」
「十鳥先生は昨年度までここで部活持ってましたよね?」
「はい…。すみません…」

 一百野会長と十鳥先生がまるで主従のようにやり取りをする。というか先生、立場弱すぎません?いや、この場合は一百野会長が強すぎるのだろうか?
 いずれにしても生徒会と教師間は垣根のない関係性なんだろう。このやり取り一つで一百野会長は仕事ができるということが窺える。