「わ、わかった…」

 もしかしたら怒られるかもと思ったけれど、渋々といった様子で引き受る。ものすごく顔を引き攣らせて、割り箸で虫を掴み持っていく。
 雛鳥を助けたい気持ちと葛藤して我慢するあたり、正義感が強い子のようだ。意地悪してごめん…でも今後お世話するなら慣れるべきだから、と僕は頭の中で自己肯定した。

「ど、どうぞ…」

 手を震わせながら、かつ体をつまんだ虫から離しながら恐る恐る雛鳥の口元へ持っていく。

「キュゥ!」

 不知火さんの気持ちを汲んだのか、勢いよく虫をパクッと食べた。りんごの時より食い付きはいい。虫は貴重なタンパク源だからなのもあるだろう。

「食べた…食べたよ!」

 自分の手から食べてくれたのが相当嬉しかったのか、彼女が跳ねるように喜ぶ。

「うん、よかったね」
「うん!あっ…ま、まぁよかったよね、うん」

 はしゃぐ不知火さんだったが、僕が声をかけると我に返ったかのように頬を染めながら顔を背けて冷静を装う。無反応な子だと思ってたけど、意外と感情は豊かだ。
 自分は不死鳥との混血だ、というのが原因で学校生活のいろんなことを諦めてたのかもしれない。そう思うとなんだかもったいないし、もっといろいろ知って欲しいと思った。

 その後、いろいろあげてみるも人間が作った練り餌のみが口に合わない様子。基本的には肉も野菜も虫もなんでも食べる雑食なようだ。肉と魚に関しては特に食い付きがよく、意外とグルメな子だなと思った。