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 放課後、朝から輝く夏の太陽は燦々と。夕刻近くに並ぶ僕らを照らした。

「不知火さん、おまたせ。じゃあ行こうか?」

 十鳥先生からお金を貰うため、いったん校門前で待ち合わせることに。もしかしたら帰ってしまったかも、なんて思ってたけどちゃんといてくれた。

「……」
「あっ…」

 しかし、僕に対しては無反応。スタスタと先導して歩いていってしまう。僕と彼女の間の距離は人が3人くらい入れるほど空いていた。
 やはりまだ、昨日の件で思うところがあるのだろうか。

「…あの、不知火さん」
「……」
「昨日のことなんだけど…」

 手持ち無沙汰になって、とりあえず昨日のことを話の掛け合いに出す。

「っ!!」

 過敏に反応し、ばっとこちらを振り返る。

「誰かに言ったの!?」
「いや、言ってない!言ってないよ!」

 ずいっと顔を近づけてくる不知火さん。視界いっぱいに彼女の綺麗な白い顔が映る。
 不知火さんは混乱すると距離が近くなる癖があるようだ。初めて教室で話した時もそうだった。

「…じゃあ、なに?」
「え、えっと」

 しかし適当に話題を出しただけなので、特に何か話そうとは思っていなかった。そういえば僕は友人のいないコミュ障だった。

「昨日なんだけどさ…その…気になることがあってさ」
「気になること?」

 頭を回転させてパッと思い浮かんだことを言う。

「昨日は突然、水かけちゃったけど風邪ひいてないかなーって…」
「…え?」

 彼女はぽかんとした表情をする。まるで、そんなこと?とでも言わんばかりの表情。

「…もっと気になることあるでしょ」
「いや、えっと…これが一番気になってた。普通に心配だし」
「……」

 何を言っているのかわからない、といった様子。そんなに変なことを聞いたつもりはない。
 当然、昨日はいろいろあった。だからと言って根掘り葉掘り聞くとか、不知火さんの扱いを変えるとかは僕にはできない。

「…変な人」
「し、心外だ」

 ぽつりと彼女が呟いた。
 もらった言葉はいい言葉ではなかったが、その声色からはいつもの無関心さは感じられなかった。焔のように暖かな、心や気持ちを感じられる声色。

「ひいてないよ」
「え?」
「風邪、ひいてない」
「…そっか。よかった」

 そのまま僕をじっと見つめる不知火さん。

「……」

 しかしそれも一瞬。ふいっと前を向いて先に進んでしまう。

「…あ」

 それでもさっき空いていた僕らの距離は、人3人分くらいの遠い距離から手が届くほどまでの距離に縮まっていた。