………


「赤翼くん、昨日鳥を1羽連れ込んだよね?」
「…え?」

 部室へ続く1階の廊下を歩きながら十鳥先生が本題を話す。

「いや…その…」
「あぁ、怒ってるんじゃないの!ただ朝の見回りをした先生が鳥の鳴き声が元飼育部の部室から聞こえて来たよって言われてね。確認したら赤い鳥が1羽いたものだから」
「……」

 あの後、特に先生には声をかけず、鳥籠に入れて置いておいた。

「…はい、黙っててすみません」
「いやいや、ほんと怒ってないんだよ?」

 あははと笑う先生。僕への信頼からか些細な問題でないからなのか、先生はブンブンと目の前で手を振った。
 先生が神妙な面持ちだったので、てっきり無断だったのを怒られるか、不死鳥であることがバレたのか、と思ったが違うようだ。

「昔飼育部では傷ついた小鳥なんかを部室に連れ込んでいたりしたから、なんだか懐かしく感じちゃってね」
「…なるほど」
「でも、面白半分で保護してはいけないよ?保護するからにはきちんとお世話しないと」
「それは、はい。そうするつもりです」

 最初からそのつもりだ。生き物の世話は大変。だからこそ、最後まできっちり面倒は見たい。

「ふふっ、赤翼くんならそう言うと思ったよ。パッと見たところ怪我してるみたいだし、治るまでは部室で世話してもらって構わない」
「あ…ありがとうございます!」

 十鳥先生は笑顔で許可してくれた。本当にいい先生だ。

「…ただ、ひとつ気になることがあってね」
「気になること?」

 そうこうしているうちに生物・飼育部の部室に到着する。

「それはね…」

 ガララッと引き戸を開けながら部室に入る。

「ご飯をあまり食べてないみたいなんだ」

 先生の言葉とともに部室の景色が目に入る。やっぱり昨日あげたご飯はあまり食べてくれなかったのか…と思ったのと同時、その目に映った部室の景色に少し驚いた。

「おや?」
「あれ?不知火さん?」

 そこにはお昼教室からいなくなっていた不知火さんの姿があった。傍らには鳥籠があり、ぐったりとする雛鳥も一緒だった。

「…あっ」

 不知火さんがこちらに気づいてパッと振り返る。彼女が愛おしそうにかつ心配そうに不死鳥の首元を撫でていたのが一瞬見えた。その姿は普段のそっけない姿からは想像できないほど優しい雰囲気だった。