「ピィ…」

 唐突に弱々しく不死鳥の子が鳴いた。

「この子もどうにかしてあげたい」
「どうにかって?」
「せめて自由に飛べるようになるまでは面倒を見てあげたいと思う。不死鳥は生まれ変わるだけで不知火さんみたいに傷は治らないんでしょ?」
「うん、そうらしい」
「ピュウッ」

 僕らの話を聞いて安心したのか、体を震わせる雛鳥。

「栄養は摂らせてあげないと。さっきも聞いたけど、何を食べるのかわかる?」
「それはわからない」
「え?もう隠しごとは──」
「そ、そういうわけじゃないの。知らない部分も多くて。食性や生活リズムは本当に…それこそ歴史くらいしか」
「…そうなんだ」

 ってことは手がかりなしか。

「雛鳥って親鳥から2時間に1回くらいの頻度で食べ物を貰うはずなんだ」
「不死鳥に親鳥はいない」
「…ってことは生まれた時からある程度自力で捕まえられるってことかな」

 雑食か肉食かにもよりそうだけど、それならある程度の期間は絶食できるかもしれない。

「とりあえず今はこのインコの餌だけにしよう。食べられないかもしれないけど、ないよりはたぶんマシだと思うから」
「…そう、よかった」
「助ける以上、ちゃんとお世話しないとね」
「うん」

 不知火さんは頷いた直後、不思議そうに首を傾げた。

「え?もしかして私も?」
「うん。そのつもりだったけど違うの?」
「い、いや…助けるなんて一言も」
「でもこの子のことに詳しいの不知火さんしかいないし」
「いや、役立つようなことは…」

 不知火さんが渋る。やはり誰かと関わるのを拒んでいるようだ。

「そっか、わかった。無理言ってごめん」
「うっ」

 不知火さんは僕の表情を見て罪悪感を抱えたような表情をする。

「…わ、わかったよ。私も家で少し調べてみる。助けたい気持ちがないわけじゃないし」
「え、じゃあ!」

 不知火さんはふいっとそっぽを向いて頷いた。嵌められたと言った苦い顔をするものの、本当に雛鳥を心配してくれている様子。僕はそれだけで嬉しかった。
 不思議な女の子と不思議な雛鳥。これから始まる僕の不思議な毎日が火を灯した。