……………
………
…
「…じゃあ、いってきます」
台風が過ぎ去って2日目。朝だと言うのに信じられないくらい暑い。鬱陶しいほどの暑さは夏が来たんだなと感じさせてくれる。
「あ、雛子!待って!」
「…お母さん」
玄関の扉を開いていつも通り登校しようとすると、お母さんに呼び止められた。
「お弁当、忘れてるわよ」
「ん、ありがと」
真っ赤な包みのお弁当を受け取る。
「ねぇ、雛子」
「なに?」
「…学校はどう?楽しい?」
「普通…」
「そう…」
学校のある日は毎朝、玄関で聞かれる問答。私は特に感情なくパッと答える。
「雛子、貴方はまだ若いんだから…嫌なことがあってもやり直せるわ」
「わかってるよ」
「だから絶対忘れないで。自分という人間を嫌いになっちゃ──」
「わかってるって、ありがとお母さん」
高校生に上がってからこう言われるのも毎日だ。お母さんのことは嫌いではないが、さすがに毎日言われると飽き飽きする。この時間はちょっと苦痛だった。
そんな気持ちが現れたのか、ついぶっきらぼうに答えてしまう。
「でも…」
「いってきます」
「あっ…」
お母さんがなにか言おうとしたが、それを遮るように玄関の扉を開ける。
「い、いってらっしゃい!」
「……」
後ろから慌てたように私を送り出す声に罪悪感と鬱陶しさを抱えながら、いつも通り外に出た。
「……」
空を見る。朝だっていうのに燃えるような太陽だ。早い時間から燦々と輝いている。燃え尽きて何もかもなくなっちゃいそうなくらい、その陽射しは熱く感じた。
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「…じゃあ、いってきます」
台風が過ぎ去って2日目。朝だと言うのに信じられないくらい暑い。鬱陶しいほどの暑さは夏が来たんだなと感じさせてくれる。
「あ、雛子!待って!」
「…お母さん」
玄関の扉を開いていつも通り登校しようとすると、お母さんに呼び止められた。
「お弁当、忘れてるわよ」
「ん、ありがと」
真っ赤な包みのお弁当を受け取る。
「ねぇ、雛子」
「なに?」
「…学校はどう?楽しい?」
「普通…」
「そう…」
学校のある日は毎朝、玄関で聞かれる問答。私は特に感情なくパッと答える。
「雛子、貴方はまだ若いんだから…嫌なことがあってもやり直せるわ」
「わかってるよ」
「だから絶対忘れないで。自分という人間を嫌いになっちゃ──」
「わかってるって、ありがとお母さん」
高校生に上がってからこう言われるのも毎日だ。お母さんのことは嫌いではないが、さすがに毎日言われると飽き飽きする。この時間はちょっと苦痛だった。
そんな気持ちが現れたのか、ついぶっきらぼうに答えてしまう。
「でも…」
「いってきます」
「あっ…」
お母さんがなにか言おうとしたが、それを遮るように玄関の扉を開ける。
「い、いってらっしゃい!」
「……」
後ろから慌てたように私を送り出す声に罪悪感と鬱陶しさを抱えながら、いつも通り外に出た。
「……」
空を見る。朝だっていうのに燃えるような太陽だ。早い時間から燦々と輝いている。燃え尽きて何もかもなくなっちゃいそうなくらい、その陽射しは熱く感じた。