「そこから人間と交配を繰り返して、徐々に数を増やしていった。代わりにいろんなものを失い、いろんなもの得た。鳥の見た目、燃やして命を繋ぐ生存方法…とかね」
「復活できなくなったってこと?」
「そう。人のには生殖機能があるから。でもその代わり──」

彼女が1つ、息を吸い込む。

「不死鳥の生を繋ぐって部分に変わった。寿命分を全うして生きられるような驚異的な再生能力」
「…それって」
「さっき私が見せた通り。不死鳥の血を持つ私たちは傷を炎で治してしまう。肉体の大半を大きく損傷しない限り、外傷では絶対に死なないの」

 開いた口が塞がらなかった。信じられない話だが、炎とともに損傷が跡形もなく消え去る姿は彼女が見せてくれたばかりだ。
 ありえなくなんてない。まさに進化の極限だ。

「私が体育を休んでるのは知ってる?」
「う、うん」
「私は人としては子供。体が成熟しきるまでは発炎機能と再生能力をコントロールしきれない。ある程度なら抑えられるけど…」

 そうか。だからさっき怪我した時、僕に向かって近寄るなって言ったんだ。

「万が一、大怪我でもしようものなら周りが轟々とした炎で包まれる。さっきの比にならないくらい」
「……」
「そうなったら、今まで先祖が隠し通してきた生き方が露呈する。それだけは避けなきゃならなかった…」
「そう、なんだ…」
「でもよりにもよって貴方にバレるなんてね」

 彼女は自嘲気味に口元を歪ませる。初めて見た彼女の笑顔は諦めにも似た暗く苦い笑顔だった。
 …不知火さんはずっと隠れて、だから誰とも関わろうとしなかったんだ。
 彼女の人を寄せ付けないミステリアスさの根源が垣間見えた。