「転生には灰を用いる、それは飛散してはいけない。だから彼らは常に安定した環境を求めていた。深い森や火山の奥とか。昔からずっと存在するこの子たちにとって、自然を切り開いていく人間の存在は厄介だった。安定した環境が消えていく度に、転生できる子が少なくなって個体数を減らしていく」

 人間のせいで自然が減り、動植物が絶滅していくというのはよく聞く話。それは不死鳥の中でも変わらない大きな問題だったようだ。

「だから克服するために、不死鳥は人間になることにしたの」
「えっ!?」

 しかしその先があまりにも突飛。先に聞いていても思わず声が出る。

「灰から新しい命を生み出すから、その灰に人を混ぜることができれば…と考えたみたい。人の死体を持ち去り、自身の命と一緒に燃やして復活する。何度も…何度も。」
「…そんな」

 原理としてできるかどうかは不明だが、鳥類がその考えに至るというのがすごい。生き残るための術なのだろうが、あまりにも思考回路が論理的すぎる。本当ならば相当知能が高いだろう。

「人以上か同等の知能を持つ生物はこの世にたくさん存在する」

 僕の表情から心を読んだかのように、彼女が声を紡いだ。その言葉にハッとした。
 そうだ…。生物の全ては未だ解明しきれていないんだ。ありえないことこそがありえない。空想上だと思っていた不死鳥がいるのだ。人類が知能においてこの世の頂点である保証なんてもうどこにもない。

「失敗を幾度も重ねるうちに、人を体に取り込むことが出来た。星の数ほど生まれ変わりを経て手に入れた肉体。最初はハーピーに近い姿だったと言われている」
「ハーピー…」

 人の体でありながら、腕は鳥の翼であるという架空の生物。もしかしたら彼らがそのオリジナルなのかもしれない。