「…不死…鳥?」
「えぇ、不死鳥」
彼女は真剣な目をしていて、それが冗談でないことはすぐにわかった。
「不死鳥ってあの?」
「…うん。輪廻転生、不老不死、悠久の時を生きるといわれている」
古今東西あらゆる文献に則った、みんな知っている架空の生態。そんな夢現な言葉も、今の彼女の口から聞くと説得力があった。彼女の鋭い視線にそう思わされた。
それと同時に、僕の胸が少し高鳴る。不死鳥がいる。その事実は僕を心躍らせるのには充分過ぎた。
「ほ、本当にいるんだ…」
「…呆れた。UMAくんなんて言われてるけど、本当に噂通りなんだね」
僕の抑えきれない疼きを見て、彼女がため息交じりにそう言った。
「あはは…。でも僕思うんだ。もし本当に存在しないのなら、数多の文献や伝承に残ってるわけないんだよ。だから僕はどんな生き物もこの世に存在すると思っている」
「……」
僕の言葉を聞いて彼女は、考える素振りを見せる。しなやかな指が口元を歪ませる。
「…私がここに来たのは、お昼の話を聞いて気になったから。もしかしたら何か見つけてしまうかもしれない、そう思ったの。…嫌な予感っていうのは当たるものね」
残念そうにそう呟く。彼女は一体何者なんだろう。
「この子、尾羽に翠の目玉模様があるでしょ?」
「…うん」
「これ、生まれ変わった回数なんだって。パッと見で20個以上。1つの命で10〜25年生きられるらしいから、その子は少なくとも200年。多くて500年生きてる」
「ご、500!?」
生物としては珍しくない数値。長命な生物はごまんと存在する。しかし、鳥類ではほとんどない。
ただそれと同時にもう1つ疑問が浮かぶ。
「ど、どうしてそんなに詳しいの?」
誰にも知られていない不死鳥の細かな生態、彼女がそれに詳しい理由がわからない。
「小さい頃から見てた文献に載ってた」
「そんなのは僕だって…」
「人が作った空想の文献とは違う」
「く、空想のって。じゃあいったいどんな…」
「私の家に代々伝わってきたもの。おばあちゃんやひいおばあちゃん、もっとずっとずっと前から」
ますます謎が深まる。不知火さんはどんな一族なんだ。生物学の第一人者か、考古学者の家系か。
…そんな月並みな思考は、先に目に焼き付いた彼女の身に起きた現象がかき消していく。
「不知火さん、もしかして…」
「私は──」
すうっと息を吸う。呼吸音が静かな部室に響いた。
「…ピィ」
不死鳥の雛鳥が1つ、呼応するように鳴いた。
「私はこの子と同じ血を持ってる。…不死鳥の祖先なの」
彼女の観念したかのような表情ともに、裏庭の茂みがサァッと揺れる。火のように熱い夏風が開いた窓から吹き込んで僕らを包み込んだ。
「えぇ、不死鳥」
彼女は真剣な目をしていて、それが冗談でないことはすぐにわかった。
「不死鳥ってあの?」
「…うん。輪廻転生、不老不死、悠久の時を生きるといわれている」
古今東西あらゆる文献に則った、みんな知っている架空の生態。そんな夢現な言葉も、今の彼女の口から聞くと説得力があった。彼女の鋭い視線にそう思わされた。
それと同時に、僕の胸が少し高鳴る。不死鳥がいる。その事実は僕を心躍らせるのには充分過ぎた。
「ほ、本当にいるんだ…」
「…呆れた。UMAくんなんて言われてるけど、本当に噂通りなんだね」
僕の抑えきれない疼きを見て、彼女がため息交じりにそう言った。
「あはは…。でも僕思うんだ。もし本当に存在しないのなら、数多の文献や伝承に残ってるわけないんだよ。だから僕はどんな生き物もこの世に存在すると思っている」
「……」
僕の言葉を聞いて彼女は、考える素振りを見せる。しなやかな指が口元を歪ませる。
「…私がここに来たのは、お昼の話を聞いて気になったから。もしかしたら何か見つけてしまうかもしれない、そう思ったの。…嫌な予感っていうのは当たるものね」
残念そうにそう呟く。彼女は一体何者なんだろう。
「この子、尾羽に翠の目玉模様があるでしょ?」
「…うん」
「これ、生まれ変わった回数なんだって。パッと見で20個以上。1つの命で10〜25年生きられるらしいから、その子は少なくとも200年。多くて500年生きてる」
「ご、500!?」
生物としては珍しくない数値。長命な生物はごまんと存在する。しかし、鳥類ではほとんどない。
ただそれと同時にもう1つ疑問が浮かぶ。
「ど、どうしてそんなに詳しいの?」
誰にも知られていない不死鳥の細かな生態、彼女がそれに詳しい理由がわからない。
「小さい頃から見てた文献に載ってた」
「そんなのは僕だって…」
「人が作った空想の文献とは違う」
「く、空想のって。じゃあいったいどんな…」
「私の家に代々伝わってきたもの。おばあちゃんやひいおばあちゃん、もっとずっとずっと前から」
ますます謎が深まる。不知火さんはどんな一族なんだ。生物学の第一人者か、考古学者の家系か。
…そんな月並みな思考は、先に目に焼き付いた彼女の身に起きた現象がかき消していく。
「不知火さん、もしかして…」
「私は──」
すうっと息を吸う。呼吸音が静かな部室に響いた。
「…ピィ」
不死鳥の雛鳥が1つ、呼応するように鳴いた。
「私はこの子と同じ血を持ってる。…不死鳥の祖先なの」
彼女の観念したかのような表情ともに、裏庭の茂みがサァッと揺れる。火のように熱い夏風が開いた窓から吹き込んで僕らを包み込んだ。