バシャーッ!!

 勢いよく飛び出した水流。火元に向かって弧を描いて伸びる。

「わぷっ…」

 水流に押されて火元から声が聞こえる。よかった!まだ不知火さんは生きてる!
 でも水かけるだけでいいのか…他にもやる事あるのでは…?消化器とかの方がいいのか?
 それ以前にまず通報しないと…110?119?でもなんて説明する?スマホは部室だ、戻る時間なんて…。

「ピィ!ピィ!」

 地面に横たわりながらも必死に鳴く雛鳥。それは心配する鳴き声に聞こえた。あらゆる思考、あらゆる情報が頭の中を支配するも答えは出ない。
 とにかく…とにかく水を!
 結局、僕はそのまま水を勢いよくかけ続けた。

………


 どれくらい経っただろうか?実際は30秒ほどの短い時間かもしれない。
 しかし、火はほとんど鎮火していた。よく見ると角材に火はほとんど移っていない。昨日の台風の影響で角材自体が湿っており、そのおかげで火の付きが悪いようだ。

「ど、どうして?」

 しかし弱まった状態でも、なぜか彼女の纏う炎だけは消えなかった。傷のあった腕や頭に、灯るようについた炎。
 勢いは弱い、だけど収まらない。その焔はまるで生きているようだった。赤と、ほんの少しの青が混ざった炎。

「だ、大丈夫?」
「…うぅ」

 不安に思い声をかける。弱々しい残り火を抱える彼女は、僕の声に身を捩って呻き声で反応した。
 声も聞こえるし、意識はある。しかしメラメラと体に灯った炎だけが消えない。
 それは俄かに信じがたい、不思議な光景だった。