「でもこっちには…」
今度は不知火さんがノートの方をめくる。
「ここです!不死鳥の生息地は王鳥山って書いてます!」
王鳥山という謎の山に不死鳥が住んでいると、不知火さんの家系がそう言っている。しかし、焔消山でも不死鳥の目撃例があった。いよいよわけがわからなくなってくる。
「みんな、ここも読んで?」
十鳥先生が焔消山の資料を指さし、僕らの視線を誘導する。
『その緋色の鳥は伝説の鳳凰に近く、先人たちは"鳳"の文字を利用してその山を鳳鳥山と呼んだ』
「おおとり…やま?」
不知火さんが書かれた文字を言葉にする。
偶然だろうか。不知火さんのノートに書かれている"王鳥山"と語感が似ている。
「焔消山は元々、鳳鳥山と呼ばれていたみたい」
「…偶然にしては似てますね」
「そうだね。私も不知火さんの話を聞いて今納得した。みんなここも見て」
先生のその言葉を合図に、十鳥先生が持ってきた文献の方を見る。
『鳳凰が住まう山として人々が山に入り、そこにいる鳥類への影響を恐れた先人は都度山の名を変えていった』
『人々に伝わらぬよう幾度も名前を変えた』
『以降、鳳凰がいるという伝説は廃れていった』
「途中課程は書いてないけど、おそらくこの名前になるまでに幾度となく名を変えて来たんだと思う。そうやって不死鳥は守られてきたんだね」
鳥たちの住処を守るために先人たちが名を変えてきた。転じて名前が焔消山となったのであれば、王鳥山と呼ばれていた時期があってもまったくおかしくはない。
焔消山が鳥たちにとっていい環境というのも、ノートに書いてあった内容と一致する。
「じゃあ、僕たちがピィちゃんを帰す場所は──」
「焔消山」
奇しくも1度訪れた場所。鳥たちが豊かに過ごしていた、僕らがバードウォッチングをした山。
帰す場所が明確になったということはすなわち…。
「ピィちゃんとのお別れ…」
翔がそう口にする。
「うん、そうなるね」
十鳥先生は静かに、寂しく口にした翔を肯定した。
ピィちゃんを元いた場所へ。それは僕らの願いでもあり、寂しくなってしまう未来でもあった。
「見たところまだピィちゃんは幼いね。もう少しだけお世話しよう。夏休みの最終日、みんなで元の場所へ帰してあげよう」
「…はい」
「…わかりました」
十鳥先生の言葉に僕と翔は寂しく頷く。
「…ピィちゃん」
十鳥先生の言葉を聞いて、不知火さんがピィちゃんを撫でる。
「キュウウ」
タイムリミットは夏休みが終わるまで。それまではたくさん愛そう。不知火さんの撫でる指先からそんな想いが感じられた。
夏の日差しと蝉の声。自然いっぱいの夏が部室を満たしていた。
今度は不知火さんがノートの方をめくる。
「ここです!不死鳥の生息地は王鳥山って書いてます!」
王鳥山という謎の山に不死鳥が住んでいると、不知火さんの家系がそう言っている。しかし、焔消山でも不死鳥の目撃例があった。いよいよわけがわからなくなってくる。
「みんな、ここも読んで?」
十鳥先生が焔消山の資料を指さし、僕らの視線を誘導する。
『その緋色の鳥は伝説の鳳凰に近く、先人たちは"鳳"の文字を利用してその山を鳳鳥山と呼んだ』
「おおとり…やま?」
不知火さんが書かれた文字を言葉にする。
偶然だろうか。不知火さんのノートに書かれている"王鳥山"と語感が似ている。
「焔消山は元々、鳳鳥山と呼ばれていたみたい」
「…偶然にしては似てますね」
「そうだね。私も不知火さんの話を聞いて今納得した。みんなここも見て」
先生のその言葉を合図に、十鳥先生が持ってきた文献の方を見る。
『鳳凰が住まう山として人々が山に入り、そこにいる鳥類への影響を恐れた先人は都度山の名を変えていった』
『人々に伝わらぬよう幾度も名前を変えた』
『以降、鳳凰がいるという伝説は廃れていった』
「途中課程は書いてないけど、おそらくこの名前になるまでに幾度となく名を変えて来たんだと思う。そうやって不死鳥は守られてきたんだね」
鳥たちの住処を守るために先人たちが名を変えてきた。転じて名前が焔消山となったのであれば、王鳥山と呼ばれていた時期があってもまったくおかしくはない。
焔消山が鳥たちにとっていい環境というのも、ノートに書いてあった内容と一致する。
「じゃあ、僕たちがピィちゃんを帰す場所は──」
「焔消山」
奇しくも1度訪れた場所。鳥たちが豊かに過ごしていた、僕らがバードウォッチングをした山。
帰す場所が明確になったということはすなわち…。
「ピィちゃんとのお別れ…」
翔がそう口にする。
「うん、そうなるね」
十鳥先生は静かに、寂しく口にした翔を肯定した。
ピィちゃんを元いた場所へ。それは僕らの願いでもあり、寂しくなってしまう未来でもあった。
「見たところまだピィちゃんは幼いね。もう少しだけお世話しよう。夏休みの最終日、みんなで元の場所へ帰してあげよう」
「…はい」
「…わかりました」
十鳥先生の言葉に僕と翔は寂しく頷く。
「…ピィちゃん」
十鳥先生の言葉を聞いて、不知火さんがピィちゃんを撫でる。
「キュウウ」
タイムリミットは夏休みが終わるまで。それまではたくさん愛そう。不知火さんの撫でる指先からそんな想いが感じられた。
夏の日差しと蝉の声。自然いっぱいの夏が部室を満たしていた。