「たしかこの辺りの書物に──」
ドサドサっと音を立てて荷台から複数の本が落ちる。古びて茶色くなってしまった本や、まだ真新しいカラーの本、論文をまとめただけの紙の束などその種類は様々だった。
「あー、あったあった!」
十鳥先生が1冊の古ぼけた本を机の上に置いた。タイトルは『焔消山の歴史』だった。
「この本に少し面白いことが書いてあってね。みんなが調べたって言う文献はどれ?」
「これです」
不知火さんがノートを手渡す。机の上にならんだ、日本の不死鳥の本と焔消山の本。どちらも大きな謎が隠されているような、そんな不思議な雰囲気を持っていた。
4人と1羽で机を囲む。
「まずは私が持ってきた『焔消山の歴史』の方から見ていこうか」
十鳥先生が書を開く。古びた本の香りは独特だ。
パラパラとページをめくっていく。お目当てのページに至るまで、目に映った言葉を端々に拾うと、『鳥』『いい環境』『新種』などが窺えた。どうやら焔消山は鳥類の宝庫だった様子。
「ここ、みんな見て」
十鳥先生があるページで手を止める。そこには焔消山の年表のようなものが事細かに描かれていた。
「年表ですか?」
「そう、焔消山がどういう経緯でそう呼ばれるに至ったかって言うのが書かれてるの。名前のルーツみたいな感じかな」
僕らは茶色の紙の上に目を向けた。
『焔消山は古来より鳥類の発見例が多く、特に緋色の鳥の目撃例が多い』
『緋色の鳥は美しい金色の尾羽を持っていた』
『綺麗な翡翠色の目玉模様もあるという』
「えっ?これって!」
「まさか!」
「ピ…」
ピィちゃんはまるでバレてたの?みたいな顔で本を見つめる。首を動かした拍子に尾羽の目玉模様が揺れた。金色の尾羽と翡翠色の目玉模様。
「断定はされていないけど、この記述を見ると明らかに不死鳥の事だよね」
十鳥先生が確信に迫る。