「えっ、焔消山ですか!?」
思わず僕は声を上げて驚く。
「うん。この前みんなで行った山だね。大学にあった昔の文献を読んでも、焔消山近辺は見慣れない緋色の鳥が目撃されていると書かれてたんだ」
「見慣れない…」
「緋色の鳥…」
僕ら3人はピィちゃんへ目を向ける。緋色の体に金色の尾羽、孔雀のような模様を持つピィちゃんは野鳥としては少し特徴的。人々の記憶に残り、文献として残っていても不思議ではない。
「実は私たちも調べてたんです」
「というと?」
「不知火さんの家に伝わっていた不死鳥に関する文献なんですけど」
「生息してる場所は聞いた事のない山でした。俺ら悩んでたんです」
「ほぅ」
十鳥先生が少し考える素振りを見せる。口元に手を当てて何か考えている。
「不知火さんの文献はどこに?」
「ここに置いてあります」
「うん、ありがとう。少し待っていてくれるかな?」
数秒、そんな感じで悩んだ後、廊下の外から何か引いてきた。
「えぇ!?」
帰ってきた十鳥先生の姿を見て驚く。十鳥先生は傍らに荷台があり、その上には分厚い本が何冊も乗っかっていた。
「大学から借りてきた書物だよ。これらを元にいろいろとピィちゃんのことを調べてたんだ」
「いや、それにしては…」
僕はその冊数を見て絶句した。ざっと80冊くらいはある。不知火さんが用意したノートよりも多い数、しかもはるかに分厚い本で調べていたというのだから、唖然とするしかない。
しばらく部室に来れないわけだ。十鳥先生はこんな量を1人で調べてたんだから。大人ってすごいんだな。