「あっそうだ、赤翼くん!」

 そんな姿に見とれていると不知火さんが声をかけてくる。

「えっと、なにかな?」
「ピィちゃんと出会った時から今までのも全部日誌に書いちゃおうかなって!」

 少し上擦った僕の声。気づかないのか気にしていないのか、明るく笑って提案する彼女。
 ほっとした半面、気づかれたいとも思った。

「…いいね!思い出しながら書いてみようか」

不知火さんの提案は素敵なものだ。努めて冷静に、かつ笑顔で肯定する。


「あ、それ俺も知りたい!」
「生駒くんは出会った瞬間はいなかったもんね」
「そうそう」
「ピィピィ」

…翔とピィちゃんほんと仲良いな。


「ピィちゃんと出会ったのは台風が来た翌日の話だったんだ。いつも通り僕が部室にいたら外から鳴き声が聞こえてきてさ。裏庭に出たらピィちゃんが倒れてて…」
「それを偶然私が見ちゃったんだよね」

あははと笑いながら不知火さんが続ける。そのままサラサラとノートに書いていく。

出会った頃の記憶。僕たちとピィちゃんの最初の思い出。


「私は一目見て不死鳥だってわかって…そこからまぁ保護を止めようとしたんだ」
「まぁ…僕も頑固だから聞かなくてね」
「その辺は有真らしいな」

翔には想像に容易いか。生き物のことになると僕はついつい頑固になってしまうしね。


「最初ピィちゃんは火のように熱くって…今にして思えば体を燃やそうとしてたのかも」
「この前もすごく熱かったって言ってたよな」
「うん。そこから不知火さんが怪我して不可抗力で秘密を知ってしまったり、不死鳥のご飯がわからなくてペットショップでいろんな種類のご飯を買ったり…」
「いろいろあったねぇ」
「あったねぇ…」

不知火さんの文字が僕らの記憶をノートに紡ぐ。たくさんの思い出。たくさんの青春。

…今にして思えば、不思議なことばっかりだ。


「ピィちゃんをちゃんと…帰してあげたいね」
「…そうだね」
「あぁ…」
「ピィッ!」

記憶を思い出し、別れを惜しむように3人の声が寂しげな声色になる。

ただそれでも…現状維持ではなく、きちんと前を向こうとしていた。

ピィちゃんの命が1度尽きてしまって、命の尊さに触れられた。

だからこそ、ピィちゃんを僕らの友達としてではなく、伸び伸びとした元の生活に戻してあげたい。