すると唐突に部室の扉が開いた。

「お、3人とも揃ってるね」

 古びた部室の扉の前に少し間延びした声。

「みんな、久しぶりだね」
「十鳥先生!」
「今まで何してたんですか?」
「何も言わずに数日間も空けて!」
「うん、ごめんね」

 そこにいたのは十鳥先生。僕たちはすぐに先生のもとへ駆け寄る。十鳥先生は苦笑いしながら、白衣を揺らして謝った。

「ピィちゃんも帰ってきたんだね」
「ピィ!」
「ふふっ、元気でよかったよ。3人ともお世話ありがとう。私黙っていなくなったのにきちんとしてくれて」
「当然です!」
「しっかり見守ってましたよ!」
「うん、さすがだね。…生き物は必ず死ぬ。命で学ぶなんておかしな話だけれど、生物と関わるというのはそういうことなんだ。死を通じて強くなれた、君たちは部員として立派に成長したと思うよ」
「先生…」

 先生はにっこりと笑った。僕たちのことを心から心配していたとわかる笑顔。会わなかった時間も、先生は先生だった。

「とはいえ、私もボケっとしていたわけじゃないんだ。ちょっと調べ物をね」
「調べ物?」

 ピィちゃんのもとに近づき、一撫で。嬉しそうに目を細め、それを見て先生が一呼吸入れる。

「みんな。この子を、ピィちゃんを帰してあげたいと思ってるよね?」

 どうやら僕らの考えはお見通しなようでドンピシャで当ててくる。本当にこういうところは僕ら高校生より遥かに大人な先生らしい。

「…はい」

 不知火さんが代表して頷いた。

「うん、よかった。そう言うと思って調べてたんだ。ピィちゃんの元いた場所を」
「どうやってですか?」
「私の通ってた大学に行ってね。教授に頼んだり、大学の図書室で調べたり、いろいろと。もちろん不死鳥のことは隠して」

 先生はそう言いながらいつものポニーテールを結い直した。黒髪の髪を窓から射す夏の日が照らす。

「あの日、初めてピィちゃんを拾った日。それって台風の日の後だったでしょ?」
「はい」

 それは間違いない。さっき日誌に書いたばかりだ。

「台風の進路を考えて、飛んできてしまいそうな場所とかにある程度目星をつけたんだ。」
「目星?」
「うん。あともう1つ興味深いことを見つけたんだけど──」
「それってどこなんですか?」

 不知火さんが十鳥先生の言葉を遮った。

「ふふっ、知りたい?」

 僕ら3人、同時に頷いた。十鳥先生が深呼吸ひとつ、ゆっくりと潤んだ唇を開く。

「焔消山、だよ」