そのページには図解された山の縮図と、大まかな場所を表す地図が描かれていた。

「お、おぉ」
「すごい」

 すごい。これも書き写したのか?
 どれだけの労力を要したか、精巧に描かれた地図を見て僕と翔は思わず声を上げてしまった。

「私、これも書かなきゃいけないんだ」

 若干1名、顔が引き攣っていた。
 あらためてまじまじと描かれた地図を見る。年輪のように描かれた等高線。そして大まかな標高の数値。約1500m、日本ではどれくらいなのだろう?山岳には詳しくないからよくわからなかった。
 周りには目印となりそうな地名がいくつか。しかし、その地名は昔のものなのかどれにも見覚えがない。

『1年を通して気候変動が少なく、火を焚き輪廻するにはうってつけだった。そんな気候に引き寄せられるように数多くの鳥類が生息している山だった』

 その地図の下にはこのように書いてある。どうやら不死鳥にとって生きるためには良い環境だったようだ。

「その山の名前は──」

 僕は見開いたノートで山の名前を探す。他の2人も同じように目線を配らせていた。ノートの端、小さく綺麗な文字で山の名前が書かれていた。

「「「王鳥山(おうとりやま)?」」」

 僕ら3人の声が合わさった。


「僕あんまり山とか詳しくないんだけど、翔は聞いたことある?」
「いや、ないな」
「私も。調べてみる!」

 不知火さんがスマホを取り出してパパパッとブラウザで検索する。

「…え?」

 しかしすぐに不知火さんが固まった。

「どう?どこにある?」
「ない」
「え?」
「そんな山、日本にないって」

 不知火さんはスマホをこちらに見せてくる。検索結果には山と全く関係のない、『王』や『鳥』などで引っかかった謎のサイトばかりが映し出されていた。

「んんん、せっかく見つけたと思ったのに」
「でも、僕は嘘が書いてあるとは思えないな」
「うん、昔から代々継がれてきたものだし、信憑性はあると思うんだけど」

 彼女の言葉に僕たちが唸る。
 不知火さんの言う通り、資料としての信憑性はかなり高い。それは僕も同じ考えだった。

「また振り出しかぁ〜」
「言わないで生駒くん、心折れそうになる」

 しかしネットで調べて見当たらないあたり、結局頭を悩ませるだけになってしまった。

「ピィ?」

 ピィちゃんが小首を傾げる。もしかしたら帰してあげられる日はまだまだ遠いのかもしれない。
 自分たちの無力さとちょっとした安心感がなんとも言えないバランスで入り混じった。