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「んー、これにも書いてない」
「こっちもダメだ」
「私の方も見当たらなかった」

 部室で3人、ウンウンと唸る。

「ピィ?」
「全然手がかり見当たらないね」
「ね、やっぱり残ってないのかなぁ?」

 ピィちゃんの首を傾げる仕草に、僕ら3人は集中の糸が解れたようにぐでっと机に突っ伏した。
 日も高く上がった14時頃。僕ら3人はお昼ご飯を食べ終えて、部室で不知火さんの持ってきた文献と睨めっこ。理由はピィちゃんの元いた場所を探すため。
 翔にもその説明をすると快く手伝ってくれた。ピィちゃんと離れるのは少し寂しいけれど、でもこのまま人間の世界にいるより
ずっといいと翔は言ってくれた。
 しかし現在、出生探しは難航中。不知火さんの持ってきた文献を手当り次第分担して確認するも、それらしい情報は見当たらなかった。どちらかと言えば歴史や身体能力に関する記述が多い。
 混血となった出自や歴史、不死鳥の能力で気をつけること、能力の具体的なコントロールの方法など、人の世を生きる術のようなものが大半だった。

「しかし、この数は…」

 しかしそれ以上に大変なのは文献の多さ。不知火さんが持ってきたノートはどっさりと。軽く50冊くらいはある。
 それだけ特殊な生まれであり、隠さなきゃいけないことが山ほどあるということなのだろう。

「不知火さんのお母さんはこの量を全部書き写したって言うんだから驚きだよね」
「私も大人になって家庭ができたら後世に伝えるようにって言われてて。この量を書かなきゃいけないと思うとなんだか今から気が滅入っちゃうよ」

 不知火さんが苦笑いしながら文献をサラサラと撫でる。
 家庭を持つ、かぁ。

「有真なんかぼーっとしてない?」
「…いや?全然?」

 翔の指摘に僕は努めて冷静に返した。