「翔！」
「生駒くん！」

　部室に入ってきたのは翔だった。

「あはは。2人とも、おはよう」

　翔が少し気まずそうな表情をした。

「ピィッ！」
「お！おぉ！」

　しかしそんな翔もピィちゃんの姿を見ると驚きと喜びが入り交じった表情をする。

「ピィちゃん！戻ってきてくれたんだ！」
「うん、ちょうど昨日ね」
「そっか、そうなんだ。よかった、本当によかったよ」

　僕が教えると、ほんの少し翔の声が感動したようなものになる。翔も同じように心配してくれてた。それがヒシヒシと伝わるような声色だった。

「ピィちゃん、おかえり」
「キュルルッ」

　そのまま翔が鳥籠に向かい、指でピィちゃんの喉元を撫でると、心地よさそうに鳴いてくれた。ピィちゃんも翔と再会できて嬉しそうだった。

「ごめんね。有真、不知火さん」

　ピィちゃんひとしきり撫で終えると翔は僕たちを見てそう言った。

「え？」
「2人に任せっきりにしちゃってさ。俺も部員なのに何も言わなくて」
「いや、そんなの気にしないでよ」
「うん。生駒くんが何かしてたのはなんとなく知ってたし」

　翔が何かしていたのは薄々感じていた。だから今日ここに来てくれたことは僕らとしても嬉しい。

「あぁ、うん。ピィちゃんが死んでしまった原因について自分なりにね。やっぱり不知火さんの言う通り、羽折さんたちが原因だった」
「やっぱり…」

　翔の言葉に不知火さんの顔が少し青ざめる。どことなくわかっていたことだった。

「それで話をつけてきた。もう不知火さんに嫌がらせはしないって」
「え！？大丈夫だったの？」
「あぁ、全然大丈夫！こっちからなんかしたとかは特にないよ？むしろ向こうがもうやめるって」
「本当に？」

　不知火さんにとって意外でもあり、嬉しい誤算でもある。ただ自分の危機が去ったことよりも、翔が傷つけられていないかというところを心配していた。不知火さんはそんな人だった。

「うん、これからは安心して部活できるね」
「生駒くん、ありがとう」

　少しだけ涙声にして翔に感謝する不知火さん。
　翔に対する彼女の態度に、僕はほんのちょっとだけ嫉妬した。