生物にロマンを感じている僕だが、現存する生物について知り尽くしているわけではない。だがある程度の自信はあった。

「全然知らない…」

 しかし、その鳥は僕の頭の中の図鑑にいる鳥類のどれとも一致しない。
 まるで燃える炎のような赤い体毛。キラキラと輝きを放つ金色の尾羽。その尾羽には孔雀のような鮮やかな翠の目玉模様がいくつかあった。手の平と同じくらいのサイズの体。雀より大きく鳩より小さい。
 いったいどんな鳥なんだろう。

「ピィ…」
「観察してる場合じゃないや」

 この子の弱々しい鳴き声で我に返る。
 見たところやっぱり弱っている。きっと昨日の台風の影響で叩き落とされてしまったのだろう。置いてあった角材が吹き飛ばされるほどの強さだったのだから無理もない。一刻も早く安全な場所へ連れていかないと。
 そう思って雛鳥の体に触れたその時──

「…熱っ!」

 触れた瞬間そこそこの熱が手に伝播した。思わず手を離して自分の耳元を触る。
 ものすごい熱いというわけではないが、およそ生物の発する熱とは思えない温度。一瞬、炎にでも触れたかと思った。
 えっ、なんでこんなに熱いんだ?

「ど、どうしよう…」

 その熱に委縮し、わからない鳥のわからない現象に戸惑う。
 とりあえず部室に戻って濡れたタオルでも用意するか、何か籠を取ってくるか…。

「…ピィ」

 さっきよりも小さい声。悩むばかりで解決しない状況が刻一刻と過ぎ行く。その間も苦しそうに上下に体を揺らし、徐々に生気を失っている気がした。

「…くっ」

 僕は意を決してワイシャツの裾をズボンから出して腹部に包むようにしてその雛鳥を抱えた。とにかく運ばなければ。ワイシャツの裾を薄いミトン代わりにする。
 さっきよりも多少マシになった。大丈夫、持てないほどじゃない。
 雛鳥をくるんだまま立ち上がり、部室に戻ろうとして来た方を振り返った。

「……」

するとその目線の先、部室から一人の女の子がこちらを覗いていた。