痛むお尻を抑えながら目を配らせ、耳を澄ます。

「ピィ…」

 伸びてしまった茂みの中で、弱々しい声がまた1つ。さっき部室で聞いた時よりも遥かに小さくなっているように思えた。
 部室の窓に遮られていた時とは違い、直接空気を伝って聞こえてくるその鳴き声。ある程度詳しい情報が得られる。おそらくは鳥の鳴き声。甲高く鳴く声は野鳥のそれと非常に似ていた。
 茂みの中、地面に近しい方から聞こえる。墜落してしまったのだろうか?

「今見つけるから…」

 ぬかるんだ地面で汚れることを省みず、地面に這いつくばって茂みを掻き分ける。
 あくまでこの行動は個人的なポリシー、怪我をしているのなら助けてあげたい。生き物を目の前で見殺しにしてしまうことは生物にロマンを感じている僕には出来ない。
 自然界で生きている生き物に人間が手を加えるのはどうかと思う。でも今回は僕のエゴを優先した。

「…ピィ…ピィ」
「近いな」

 茂みと鳴き声と格闘すること数分。だいぶ声が大きくなってきた。振り返ると部室の窓はまだ近くにある。部室からそんなに離れていなくて安心した。これなら見つけた後すぐに運び出せそうだ。

「あっ、いた!」

 探すこと数分、掻き分けた茂みの先でぐったりと倒れている雛鳥を見つけた。目を瞑り、肺を必死に動かして心拍数と同じ速さで上下する小さな体。

「見たことない」

 その鳥は僕が1度も見たことのない雛鳥だった。