一ヵ月ほどたったある朝のこと

「やっぱり働こうかなぁ」
遠慮がちにお弁当を渡しながら小声で彼女はそう言った。

そろそろ言われると思っていた。
自分が彼女ならきっと言うだろう。

インドア生活も長いと飽きてくる。
働いた方が好きな物も買えるし
頑張れば大きな部屋に引っ越しができる。

「いいよー」と返事をすると、クローンは満面の笑みを浮かべる。
自分の満面の笑み……あまり可愛くないと気づく。
他ではやらないでおこう。

「いや、実はお金を貯めてここに引っ越ししたいんだよねー」
彼女はタブレットを開いて私に物件を見せた。
早っ!準備早い。
もう目的を決めていたのか。
あなどれないな自分。

それは
新築3LDKのデザイナーズマンションだった。
駅・コンビニが近くて、セキュリティも完璧。
収納が広くて日当たりも良く、キッチンがおしゃれ。
わぁーこの寝室の照明可愛い。

「寝室のライトがいいんだよね」
さすが自分。同じところに目を付けている。

よくよく読めばまだ建設中で、入居者募集はもう少しだけ先らしい。