【自分で自分の始末ができない女】
名刺を作るなら名前の横にそう書きたい。
自分だけの部屋でひとりコーヒーを飲みながらそう反省した。
佐々木さんに泣きついた結果、教えてくれたのは《クローンバスター》という裏技師たちだった。
お手軽にクローンができるという時代になり、正直私みたいな人たちがたくさんいるらしい。
私もバカみたいにひとりで追い込んでしまって、あまり調べなかったのが悪かった。
やふーの知恵袋とか発言小町あたりを開けばよかったのにと、後から思う。
やっぱり突っ走る性格なんだね。
《クローンバスター》の仕事は名前の通りにクローン退治だった。
佐々木さんも自分のクローンが暴走して、不倫相手の家に乗り込みそうになり、事件になる前に依頼したそうだ。
『自分の願望を叶えようとしただけなんだけどさ』フッと笑って会社の給湯室で教えてくれた。
あの真面目で優等生な佐々木さんが不倫してたとは、人生いろいろ。
私は《クローンバスター》に依頼して、1号と2号を消滅させた。
しっかり話し合うふりをして、部屋にバスターさんを招くと、あっという間に彼らは私の目の前で彼女たちをスタンガンで気絶させ、首筋をチェックして特殊のライトを当てると、彼女たちの首筋にバーコードが浮かんだ。そして彼らは彼女たちの腕に注射をすると、彼女たちは見る見るうちに溶けてしまい、ほんの5分もたたぬうちに水たまりと化してしまった。
イリュージョンの世界。
彼らはすぐに家を出て、私に残されたのは20万円の請求書だった。
ひとり10万か。
ちなみに闇でひとり増やした金額は40万だった。そっちの方が高かった。
本当に何も考えてない奴で涙も枯れる。
でもそんなに高い?闇だから?
その割にカッスカスのクローンだった気がするよ。



