彼女の発案したいいことは
全然いいことではなかった。

もろブラックだった。

「もうひとりクローンを作るの。でも正式に作るとお金がかかるから、私のクローンを作るの。あのね教えてもらったんだけど……いいサイトがあるのよ」
タブレットを動かそうとしている彼女の手を止めて、私は「ダメ!」ってはっきり言った。

初めて意見が分かれた。
天使と悪魔の自分を見た気分。

「違法だよ、あげるくん」
ちょっと笑いを取るように、おまわりさんの帽子をかぶった黄色い犬の声を真似してみたけど、彼女はスルーして「でもね」と話を続ける。

「実際にやってる人多いよ。バイト先はみんなクローンだから情報収集完璧だもん」

「スルーしたな」

「あげるくんの声は好き」

「ありがとう。ちょっとさ、一回落ち着こう」
私がそう言うと彼女は素直に「カフェオレ入れるね」と言ってキッチンに向かった。

うーん。どうやって頑固な私を説得しよう。