「有栖川って、妹いんの?」

 同じクラスの堂道翼(どうどうつばさ)が、ふと、白兎にたずねてきた。

 堂道は、スイーツを食べに行く仲間――菓子友だ。普段は弓道部で忙しい堂道だけれど、部活の休みと白兎のアルバイトの休みが重なった時は、必ず一緒にスイーツを食べに行ってくれる。男子の友達にはスイーツをわざわざ食べに行く者が少なく、堂道は白兎にとっては、とても貴重な存在だ。


 今も、白兎と堂道は放課後にスイーツ食べ放題の店の行列に並んでいるところだ。

「は? いないけど。なんで?」

 有栖川白兎は、生粋のひとりっ子だ。妹なんていない。

「いや、こないだ小学生くらいの女の子を連れて歩いてるとこ見たからさ。商店街のお茶屋で、ソフトクリーム食べてなかったか?」
「あぁ。それ、ましろだ。バイト先の店長の姪っ子」
「姪っ子?」

 堂道は、不思議そうに首を傾げている。

 まぁ、普通は店長の家族と仲良くなるなんて、あんまりないよな。

「ましろは店の手伝いしてて、オレが接客の指導してんだよ。素直でいい子なんだ」

 ましろはたまにドジもするけれど、お客さんのために一生懸命になれる子だ。最近は接客も上手になっているからか、お客さんから指名が入るほどなのだ。本当に、えらいと思う。

「お前、もしかしてロリコン?」
「はぁっ? バカかお前。誰がロリコンだ!」

 しょうもないこと言いやがってと、白兎は堂道を怒ったけれど、それならましろは、やっぱり妹のような存在だろうか。ついつい、向こうが自分のことを兄貴と思ってくれていたら嬉しいなと思ってしまう。

 ちょうどその時、スイーツ食べ放題のお店の店員さんが外に出て来た。

「おっ! いよいよオレらの番かーっ?」
「申し訳ございません。本日はスイーツがなくなってしまいまして。今のお客様で終了のさせていただきます」

 店員さんの衝撃の発言に、白兎と堂道は凍りついた。

「マジかよ! ここまで並んだのに!」