ましろ、りんごおじさん、アリス君、そしてお手伝いに来てくれた美容師の乙葉さんと、お花屋さんの大地君と愛華さんが、たくさんの拍手を送った。

「母さん、すてきですよ」
「おばあちゃん、すっごくきれいな花嫁さんだよ!」

 りんごおじさんとましろが声をかけると、おばあちゃんは訳が分からない様子で慌てていた。

「やっ、やだねぇ! いったいどういうことだい? ドレスコードって聞いてたのに」
「結婚式だよ!」
「結婚式?」

 ましろは、恥ずかしがるおばあちゃんの手をぐいっと引いた。そして、お店の真ん中を一歩一歩と歩いていく。短いヴァージンロードだけれど、その先にはおばあちゃんのことを一番大切に思っている人が待っている。

「ばあさん。いや……、海子さん」

 おじいちゃんの長年来ていなかった黒のスーツには、ちょっとシワが寄っていた。けれど、胸におばあちゃんの髪飾りと同じヒマワリの花のブートニアが刺さっていた。ステキな花婿さんだ。

「大事な結婚記念日を忘れるわけないだろうに。本当は海子さんを驚かせたかったんだ」

 おじいちゃんは少し手間取りながら、パカッと小さな箱を開けた。それは、おじいちゃんからのサプライズプレゼント──、シルバーのペアリングだった。

「一悟さん……!」
「海子さん。つらい事も、楽しい事も、二人で分かち合って来た。これからもわしの隣には、海子さんがいないと困る」

 おじいちゃんは、おばあちゃんに手を差し伸べた。

「急に、こんな……。やっ、やだねぇ。恥ずかしい……」

 おばあちゃんは顔を赤くして照れていたけれど、うれしそうに笑っていた。こんなおばあさんを見たのは初めてで、ましろの胸も熱くなる。

「おばあちゃん! 指輪、はめてもらいなよ」

 ましろはおばあちゃんをおじいちゃんのもとに送り届けると、パタパタと小走りでお店のすみっこにいたりんごおじさんの隣に移動した。

 りんごおじさんの隣から見たおじいちゃんとおばあちゃんは、今まで見たことがないくらい、とても幸せそうに笑っていた。

「お母さんにも見せてあげたかった」

 ましろがそうつぶやくと、りんごおじさんは、そっとましろの肩を抱き寄せた。

「きっと、見てますよ。天国から、お祝いしてくれています」
「そうだね。そうだよね……!」