おじいちゃんは戸惑っているようだったけれど、ましろの想像とワクワクはどんどんふくらんできた。

「今さらも何も関係ないよ。今日おばあちゃんが、ウエディングドレス着てみたかったって言ってたもん。おばあちゃんにウエディングドレス、着せてあげようよ!」
「ばあさんが、そんなことを言っとったのか……」
「僕もいい案だと思います。母さんは準備はこちらでやりますから、父さん、おとぎ町に出て来れますか?」

 りんごおじさんが賛成してれたら、こっちのものだ。会場はファミリーレストラン《りんごの木》。新郎新婦は、白雪一悟と白雪海子だ。




 ***
 翌日の日曜日。
 好都合なことに、おばあちゃんは映画と一人カラオケに出かけて行った。田舎には映画館もカラオケもないから、絶対に行きたかったらしい。

 ましろもいっしょに遊びに行きたかったけれど、ぐっとこらえて結婚式の準備を進めた。

 まずは、会場のセッティング。《りんごの木》のテーブルは、四人席と二人席だけしか入らないため、ゲストは少数精鋭の家族婚だ。そしてクロスを真っ白なものに取り替えて、シルバーの食器を磨く。

 次は、りんごおじさん特製のディナー。おじいちゃんもおばあちゃんも、そんなにたくさん食べないので、コース料理は品数と量を絞る。

 サーモンと海藻のサラダ、ゴボウのポタージュ、白パンとバケット、フィレ肉のステーキ、そしてデザートはウエディングケーキだ。ウエディングケーキ作りにはアリス君も参加していて、どうやらこだわりの逸品らしい。

「どんなケーキなの?」
「企業秘密だ」

 ケーキを見に行くと、アリス君は目つきの悪い目でニヤッと笑って、ましろをキッチンから追い出してしまったのだ。ちょっと腹立たしいけれど、その分わくわくする。


 そしてお花や衣装の準備をしていたら、おじいちゃんがお店にやって来た。

「ここが凛悟の店か。引っ込んだ所にあって、分かりにくかったぞ」

 おじいちゃんは田舎にいる時とは違って、おしゃれなデニムと帽子を身に付けていた。おとぎ町に来るために選んだのかなと思うと、ちょっとかわいい。

「おじいちゃん! 長旅お疲れ様!」
「おぉ~、ましろちゃん! 会いたかったぞ~! これ、ましろちゃんにお土産だ!」