ましろと大地君のひそひそ話は見事に見つかってしまい、ヨガの先生の注意が飛んで来た。「ごめんなさい!」、「すみません!」と大慌てだ。

 けれど、四つん這いの体勢から、右手と左足を浮かす動作に体がぷるぷるしてしまう。すでに倒れてしまいそうだ。

 うわっ! 想像よりキツいよ!

「五秒キープしてくださいね!」

 ええっ! 五秒も……!

 ヨガの先生の言葉を聞いて、ましろはコテンッと横に転がってしまった。




 ***
 大地君はましろが取り組んでいるダイエットメニューに加えて、自宅での筋トレと食事内容の見直しをしているらしい。ちなみに食事のレシピはりんごおじさんがアドバイスしていて、無理せずおいしく食べながら痩せてきているそうだ。

「成果が出ているようで、嬉しいですね」

《りんごの木》のバックヤードで夜ご飯を食べていたましろとりんごおじさんは、大地君の話をしていた。
 メニューはぎょうざだ。最近りんごおじさんは、どんな「プロポーズぎょうざ」を作るか悩んでいるようで、いろんなぎょうざが食卓に並んでいる。
 パリッとしたお肉たっぷりの焼きぎょうざ。小さくてかわいいひと口ぎょうざ。もちもちした水ぎょうざ。ぷりぷりのエビが入ったエビぎょうざ……。どれもおいしくて、ついつい食べ過ぎてしまう。

「わたし、りんごおじさんのせいで痩せないんじゃないかな。ヘンゼルとグレーテルの魔女みたいに、わたしを太らす気なんじゃない?」
「ましろさんは、やせる必要なんてないんですよ。体力がつけば、それでいいと思いますよ」

 りんごおじさんは微笑みながらも、軽く首をかしげていた。

「なかなかピンと来ませんね。プロポーズにふさわしいぎょうざ」

 やっぱり、ぎょうざのことで悩んでるんだ!

 その時ましろは、「あっ!」と思い出した。アリス君が言っていた「お皿は花かご」という話だ。

「ぎょうざをお花みたいにできないかな」

 皮が白いぎょうざは、どうしても並べると地味になってしまう。もちろん、ぎょうざらしくて美味しそうだけれど、どうせなら料理だって華やかなプレゼントになってほしい。

「なるほど。やってみましょう!」

 りんごおじさんはいいアイディアがひらめいたらしく、笑顔でましろの取り皿にぎょうざをポンポンと放りこんできた。

「だから、食べさせ過ぎだってば!」